クリティカルシンキングの身につけ方:前編 <習熟度4つのレベル編>

21世紀のいま。コンピューターが人間の働き方を大きく変え、社会の中で新たな働き方やライフスタイルが生まれています。この様に社会構造が変革する中、「学校の中と外」で、子どもにとっての成功に対する定義も改める必要があるでしょう。

発達心理学の権威であるキャシー・ハーシュ・パセック氏と、ロベルタ・ゴリンコフ氏は、著書“Becoming Brilliant: What Science Tells Us About Raising Successful Children ” (タイトル訳)「優れた子どもを育てるために科学的に導き出された方法とは?」)のなかで21世紀の 「子供達の成功を測る指標」となる6つのCのスキルを、4つの習熟度に落とし込んだフレームワークとして提案した上で、親子で実践できるアクティビティを紹介しています。

「子供達の成功を測る指標」の6つのCのスキルには、「collaboration (共同作業)」「communication (コミュニケーション)」「content (内容)」「critical thinking (クリティカルシンキング)」「creative innovation (クリエイティブなイノベーション)」「confidence (確信)」をという頭文字に「C」をもつ6つがあり、この6Cの各々のスキルは、4つの習熟度のレベルに分かれると、下記表の様に本書で紹介されています。

critical thinking framework

そして本書では、習熟度レベルを意識しながら、子どもたちが6Cスキルを習得できるよう親子で実践できる日常的な会話法やアクションの例が紹介されています。

今回は6Cの中でも「クリティカルシンキング」について取り上げ、定義と習熟度レベルの詳細についてご紹介します。

 

クリティカルシンキング:グローバル共通言語 / 情報判断ナビゲーター

 

クリティカルシンキングは、一般的に「与えられた情報や他人の意見を問い直し、そこから論理的により良い選択肢を考えだす力」といわれます。情報をうのみにせずに事の是非を判断できる「目」と、与えられた状況の中でベストな選択肢を考えだす「頭」で、正解主義や詰め込み教育の対極にあるものとも言えます。

80年代生まれの筆者が経験した日本の教育ではクリティカルシンキングを習得し、活用する機会がありませんでした。アメリカに来て会議やワークショップの場で驚いたことは、議論の質とスピードでした。クリティカルシンキングが訓練されたアメリカ人たちは、与えられた情報をうのみにせず、良い質問を投げかけ、前提や事実確認をし、議論のポイントの理解を全員で合わせた後、いっきに本題に入ります。これを短時間でビジネスの会議時間は基本15分 ~ 30分を目安、どんなに長くても1時間でやり遂げます。(特にシリコンバレーのTech系企業は効率重視の方が多いという印象です。)

このスピード感と本題に入り込むダイナミックさに筆者は圧倒されてしまい悩む日々が続きました。家に帰り書斎で紙に書いて整理するとできるのに実際の場で議論となった途端、瞬発力が発揮されない。それには、会議の中で自分が理解するまで遠慮せずに質問を相手に投げかけること(同時に相手は聞き手が理解するまで説明する責任があるので聞いても大丈夫)と双方理解が合ったと認識する過程を踏むことが必要だと気づきました。そして事実確認、様々な選択肢を吟味した上でベストな選択をしていくステップをとること、まさにクリティカルシンキングを普段のコミュニケーションに取り入れることが大事だと気づきました。

それは会議だけでなく、カジュアルなネットワーキングの場でも新しい人と会話し上手に質問し会話を深掘りし盛り上げ、お互いの印象を良くすることにも活用できることも知りました。世界中から人々が集まる多様性溢れるアメリカではクリティカルシンキングは共通言語とほぼ同等と言えると実感し、日常的に対策ができないか考えていた矢先にこの本に出会い、目からウロコでした。(筆者も現在も継続的にトレーニング中です。)

また、いまの子どもがクリティカルシンキングを身につけることは、情報化社会の中で流されず、世の中の物事を正確に理解することにもつながっていきます。本書によると、企業のリーダー達が記憶を今まで程重視してないことが分かります。
「” 知識量は2年ごとに倍増してきている。よって、私たちがこれまでの人類文明発祥時から創られた情報、事実を暗記したとしても2年半後には50%の知識量となり、5年後にはたった25%にしかならない 」
もはやこれからの時代人間は、暗記を通し知識量を競うことは通用しません。クリティカルシンキングは、必要な知識を総合的に組み立て、未知のものに対してこれまでの情報を正しく理解し使い分け判断していくナビゲーターとなっていきます。

 

さてここからは、クリティカルシンキングの習熟度4段階のレベル別目安をご紹介します。

クリティカルシンキング 習熟度 4段階のレベル

 

レベル1 Seeing is believing (見たものが正しい)

 

人間は、1歳児のときにクリティカルシンキングの最初のレベルを習得するといわれます。自分で見たもの、聞いたことが全て正しい、と判断をします。この時点だと、事実を証明する証拠もないまま判断することになっていきます。本書によると、残念ながら大人の中でもこの思考法をしてしまっている人が中にはいるそうです。(例:「これは私の仕事ではありません」というメンタリティを持ってしまっている人など。)

レベル2 Truths differ (真実は一つだけではない) 

 

レベル2になると自分以外の意見があること、様々な見方が存在するということを認識します。そして4歳児になると、どの人が言っていることがより正しそうなのかを比較検討することができるようになります。

 

レベル3 Opinions (意見を真に受ける)

 

レベル3の思考力を持った人は、しばしば “They say~ “「〜らしいよ。」と口ずさみます。誰かが言及した意見を正当と受け入れているパターンです。これは科学的な裏付け、証拠を理解していない状況で第三者が発信した意見を正しいと思い込み、多くの大人が陥ってしまっていると言われています。クリティカルシンキングは、情報元の”Who says what to whom?” (誰が、何を誰に伝えているのか?)を正しく理解したときにレベル4の完成レベルに達します。レベル3の時点だとまだ不十分な状態です。

 

レベル4  Evidence or “mastering the intricacies of doubt” 
(証拠、または疑問をなげかける複雑さをマスター)

 

レベル4の思考力を持った人は、”Synthesizers” (総合、合成する人)と言います。証拠に基づいた情報を正しいタイミングでかき集め、これを正しい疑いをもって考え、賢く選択をする人です。1つの分野の知識に限らず、様々な分野にまたがった知識をまとめ、そのときの状況で効果的な判断をすることが重要になります。そこで、”Interdisciplinary Study “(学際教育)の学び方がクリティカルシンカーの中で標準となるでしょう。例えば料理人は、料理の知識だけでなく、化学や農業分野の知識も駆使していくことで、料理の世界の常識だけにとらわれず、料理の道のさらなる高みや創造性を追求していくことができます。

日常を振り返ってみて、現在のご自身のレベルはいかがでしょうか?自分の中でどのレベルに当てはまっているのか、その時々の状況で意識してみると日常のコミュニケーションの中で変化がでてくるかもしれません。

次回の後編では、レベル4へとブラッシュアップするために親子で取り組めるアクティビティを紹介していきたいと思います。

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著者プロフィール

Tomoe Hashimoto

橋本 智恵

教育テクノロジー関連のフリーランス。ソニーの新規事業 (EdTech / STEM教育サービス)の米国市場リサーチ、Business Developmentを務める。EdTechWomen Tokyo Founder。シリコンバレーの21世紀教育、Edtech事情についてブログ更新中

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