人工知能 (AI) 時代における子育てを考える:藤野貴教氏インタビュー (第2回)

2017年に入り、「人工知能 (英語でのArtificial Intelligenceを略称して、以下 "AI")」というワードをメディアなどを通じて聞く機会が増えてきています。よく、「AIにより仕事が代替される」、「AIが人間を超える(シンギュラリティ(技術的特異点)の到来)」、また「今の子供達の大半は、大人になる頃には全く新しい仕事を経験することになる」と言われていますが、来たるべきAI時代を見据えて我々親世代ができることはどのようなことなのでしょうか。

この大きなテーマへのヒントとなるお話を『2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方』(かんき出版)の著書、藤野貴教さんに伺いました。第2回は、AIにとって変わられることと、変わられない普遍的な価値についてがテーマです。

 

テーマ3:AI時代に代替される仕事

Q AIの話に戻りますが、今までの代替されてきた仕事とAI時代に代替される仕事とはどう異なると思われますか?

藤野さん:AI時代においては、一言でいうと、「仕事の質が変化する」と言われています。基本的に単調で繰り返しの仕事、オペレーションがメインとなる仕事やルーテンワーク、正確さが問われる仕事というのはAIに代替されて行く可能性が高くなります。また、パターン化されやすい仕事も対象です。これは決して工場などの仕事だけではなく、知的労働と言われる仕事の領域でも起こります。例えば、会社員でもそうですし、税理士、弁護士といった仕事も当てはまって来ます。


例えば、先日V6の岡田准一さんのラジオ番組、「Growing Reed」にゲストとして呼んでいただいた際の話ですが、映画製作を例にとってみましょう。映画制作においては、映画監督は代替されないかもしれないけれど、脚本や映像編集と言った仕事はある程度AIにできてしまうのではないかという話が出ました。つまり、過去のデータからある程度、世の中にウケる脚本や編集方法というのはパターン化することができる可能性が高いということです。一方、監督の仕事は、全体を俯瞰し、多くの人を巻き込んでいく、いわゆる「感情労働」です。こう言った感情労働は、なかなかAIには置き換えられません。感情労働の面で考えると、例えば世の中的に肉体労働は減っていっても、人力車の運転手は残ると言われています。彼らは肉体労働だけではなく、お客さんとのコミュニケーションを取る感情労働だからです。ほかにも、マッサージの様なセラピストの職業も、人間だから提供できる癒しというものがあり、それも代替されにくいと言われています。

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テーマ4:AIに代替されない人間の価値

Q) AI時代には、人間は人間にしかできないことをする事が幸せな働き方に繫がるとのことですが、具体的にどのようなことでしょうか?

人と人との繋がり、人間だからできること

例えば、市役所や区役所の仕事を例にとって説明して見ましょう。今、手書きの文字を読み取るAIが進化しつつあります。このテクノロジーが進化すると役所の仕事が圧倒的に変わるのです。書類に書かれた手書きの文字を確認し、データ入力して、印刷と言った今まで人間の職員が行っていた業務が全てAIに代替することが可能となります。

そうすると、何が良いかと、例えば担当者の人は、AIが書類の処理をしている間に窓口に来たおばあちゃんに「最近どうですか?何か困っていることはないですか?」と問いかけることができ、本来人間だからできるコミュニケーションに、そしてフォーカスできるのです。

つまり、人間がやらなくて良いことをAIに代替させて、人間だからできること、人間にしかできないことにシフトしていけます。早く終わらせる、効率を上げるだけではなくて、仕事の質が変化していきます。市役所に働く人は、元々、「市民のために何かしたい、地元に貢献したい」と言った気持ちを持って働いている人も多いと思うのですが、日々の業務は単調な作業の繰り返しに忙殺されているのが現実です。お金や安定のためなど、自分の本来の想いや感情を犠牲にして働いているかもしれません。幸せな働き方というのは、本来は本質的な自分のやりたいことに集中できることなのです。


今後は、人と人との繋がりや、人間だからこそできることにシフトしていきます。前述した仕事の質的変化が起きていき、AIはサポート的な役割として活用されて、人間にとっては「幸せ」な時代とも言えます。要はやりたいことに集中できる時代。そうなると、お金のため、生活のためではなく、「そもそも何をやりたいのか?どんな働き方ができたらハッピーなのか?」を一人一人考えることが大事になっていきます。

 編集部追記:儒教の中心概念「中庸」とは、「異質なものを組み合わせながらも和合させ止揚。完璧を目指し向上していくこと」だそうです (出典:言の葉庵 http://nobunsha.jp/meigen/post_65.html)

編集部追記:儒教の中心概念「中庸」とは、「異質なものを組み合わせながらも和合させ止揚。完璧を目指し向上していくこと」だそうです (出典:言の葉庵 http://nobunsha.jp/meigen/post_65.html)


中庸であること

また、違う側面から考えると、東洋哲学の言葉ですが、「中庸であること」、が大切かもしれません。実際にAIに代替される仕事はありますし、それは自分の身に起こることかもしれません。その時に、「困った!どうしよう!」と慌てるのではなく、「では、どう対応すれば良いのか?」と考えてみることです。どんなことにも光と陰がある様に、良い面と悪い面があります。その両面を見て、どちらもあるというのを一旦受け止めていくことが中庸である、ということです。本来、どちらの面もあり、それを受け入れながら自分のあり方を考えるという考え方が日本人にはあると僕は思っています。未来は誰にもわかりません。なので、今この瞬間、自分でどうありたいか、という意思決定をすることでしかないのです。

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著者紹介:

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藤野貴教

株式会社働きごこち研究所 
代表取締役/ワークスタイルクリエイター
 

藤野氏プロフィール

アクセンチュア、人事コンサルティング会社を経て、東証マザーズ上場のIT企業において、人事採用・組織活性・新規事業開発・営業MGRを経験。
2007年、株式会社働きごこち研究所を設立。「働くって楽しい!」と感じられる働きごこちのよい組織づくりの支援を実践中。「今までにないクリエイティブなやり方」を提案する
採用コンサルタントとしても活躍。グロービス経営大学院MBA。
2015年より「テクノロジーの進化と人間の働き方の進化」をメイン研究領域としている。日本のビジネスパーソンのテクノロジーリテラシーを高め、人工知能時代のビジネスリーダーを育てることを志として、全力で取り組んでいる。2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方(かんき出版)を上梓。
2006年、27歳の時に東京を「卒業」。愛知県の田舎(西尾市幡豆町ハズフォルニア)で
子育て中。家は海まで歩いて5分。職場までは1時間半。
趣味はスタンディングアップパドル(SUP)。朝の海が大好き。自宅の隣の田んぼでお米を作っている。

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ライタープロフィール

島田 敦子 | Atsuko Shimada

教育関連企業、自動車メーカー、IT企業でのマーケティング職を経て、米系機関に勤務。現在はIT業界に関連したリサーチや、ビジネスコンサルなどに携わる。2004年頃からダイバーシティプロジェクトに参画したことをきっかけに、ワーキングマザーの取材やイベント活動などをプライベートで実施。妊娠・出産を機に次世代教育や、AI時代の教育に興味を持つようになり、現在はモンテッソーリ講師養成講座を受講中。一児の母。 慶應義塾大学総合政策学部卒