[書評] 「文系軽視」ではイノベーションは生まれない

タトル・モリエイジェンシー「翻訳書ときどき洋書」に、未翻訳のお薦め教育書の書評を、隔月で寄稿させて頂いております。今回は、リベラルアーツがAI 時代になぜ重宝されるのかというのを、豊富な事例やユースケースで紹介をしている一冊となります。

"Fuzzy and Techie" というタイトルの一冊で、シリコンバレーのベンチャーキャピタリストのハートレー氏が、なぜリベラルアーツを中心とした人間、人間社会、文化についての学問が、リアルとデジタル、地域と世界、宇宙と地球、民族など、様々な要因が絡み合う、複雑な世の中を前進させるために必須なのかというテーマを深掘りした作品です。

日本の文系そのままイコールでは無いとも思いますが、私も含めた文系人材には励みになりますね!


工業化社会は、高度な技能を持つ人材を育成するために、大学を中心として学業の専門分野化を進めた結果、気がつくと理系と文系という大きな壁を作ってしまいました。
昨今文理融合(文系と理系が融合した学部)や学際学部も増えていますが、まだまだその数は多くありません。

今回ご紹介する一冊は、これからの情報化社会においてイノベーションを起こしていくには、いかに Fuzzy (ファジー:人文科学や社会科学、自然科学といったリベラルアーツを幅広く学んだ人)とTechie (テッキー:工学、理学やコンピューターサイエンスなど、科学的な専門分野に特化した人)が協働することが大切で、お互いの強みを活かすことで初めて、人間にとって意味のある大きな進歩が遂げられるのか、様々な具体的な事例を含めて伝えています。

シリコンバレーの起業家にも意外と多い文系出身者

作者のハートレー氏はGoogle、Facebookといったネット業界のトップ企業や、ハーバード大学のバークマン・クラインセンターで働いたのち、現在はベンチャーキャピタリストとして活躍しており、まさにファジーとテッキーの両世界を見てきた人だと言えるでしょう。彼が本書を執筆するきっかけとなったのは、アメリカでいう理系=テッキーと、文系=ファジーという考えが広まる中で、イノベーションを牽引しているのがテッキーだというイメージが浸透していることに反証をしたいと思ったからだそう。実際セールスフォース・ドットコムの共同創設者のハリス氏や、YoutubeのCEOウォシッキー氏などシリコンバレーの著名な起業家やリーダーの多くも、社会科学、アート、文学、哲学などリベラルアーツ出身なのだといいます。

確かに私自身も経済学部出身で、縁ありインターネットのテクノロジーをフル活用したスタートアップの起業も経験していますが、「自分がエンジニアではない」ということを引け目に感じていました。
一方、お客さんがゼロの状態から100万単位のユーザーに支持されるようになる過程で、ユーザー思考、戦略的思考、創造力、コミュニケーション能力、異文化共感力など、文系ならではの力が結集したことで、継続して使ってもらえるサービスに成長できたことも、今となっては確信があります。
本書は私のような「文系出身だけど、テクノロジーをフル活用して社会を前進させたい」という人達に勇気を与える一冊です。

つづきはこちら・・・http://bit.ly/2T6d5se

出典:タトル・モリエイジェンシー「翻訳書ときどき洋書」(https://note.mu/tuttlemori

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