自分で「学び」を選べる大人になるために

夫婦関係、パートナーシップ、国際結婚などの分野でのコンサルタントの塚越さんによる寄稿記事です。FutureEdu でも生涯学び続ける Lifelong Learner (ライフロングラーナー)を育てるためには、いつでも自分から学び直しができる「学び方を学ぶ」経験を子ども時代に積むことが大切だと思っています。これから正解のない時代に突入する中生涯の学び直しは必須条件となることでしょう。大人になってから苦しまないように、子どもの頃から自分で決める経験を少しずつ積ませてあげたいものですね。我が家では、3年前の子どもの転校時に本人に最終的に判断してもらった事が大きな転機となり、多くのことを子どもたちが自ら日々の生活の中で意思決定しています。どこまで本人に裁量を与えるのかは、家庭の方針や発達段階にもよりますが、家族でバランスを常に調整しながら、子どもの自立に伴走するのが保護者の大きな役目ですね。

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自分で「学び」を選べる大人になるために

少し前ですが、立教大学の中原淳先生の書いたこちらのブログ記事「ニッポンの大人は、『学ぶ内容』を『自分で決めた経験がない』のかもしれないという『妄想』」を読みました。

中原先生の著書に「働く大人のための学びの教科書」という本があります。そのためなのかどうか、最近よく「私は何を学んだらよいですか?」という質問をたくさん受けるのだそうです。

あまりにも頻繁にその手の質問を受けるので、中原先生は、日本では人生において「何を学ぶか」を自分で決めた人が極めて少ないのでは、という仮説をもつに至ります。

そして、日本人は

・「何を学ぶか」ではなく、偏差値という輪切りの一番高いところにある学習内容を学んで来た

・ベルトコンベアに乗るように教育機関を選び、学ぶ内容を他人に決められてきた

のではないか、と書かれています。

記事の後半でも、学ぶことに自分でお金を出している人もまた少ないのではないか、という観察から、自分で決めていないので興味を持てないし、自分で払っていないので真剣に取り組まないのでは、ということも言っています。

その結果、何を学べばいいのかわからない大人が量産されているのではないか・・と記事は結ばれています。

教育の未来を考えるにあたり、私自身、この点はどうしても外せない大事なテーマだと考えています。

私はアメリカで出産し、まだ子どもたちが小さいうちに、こちらの Redirecting Children’s Behavior” (自己肯定感を育む子育て(仮)という本に出会いました。アドラー心理学をベースに書かれたこの本では、子どもが健全な自己肯定感を育むためのコミュニケーションのヒントがたくさん紹介されています。

そして、その本の中にも、父親に言われるがままに進学し、医学部を卒業したけれど、その卒業証書を父親に渡して家を出てしまった青年のストーリーが出てきました。

要するに、親の承認があることだけをする生活をしてきてしまい、自分は本当は何をやりたいのかをじっくりと考える機会がなかったか、あるいは、それがあっても自分が本当に希望していることについて、親と真摯なコミュニケーションをとれるような関係ができないまま、大学生になってしまった、という状況があったのでしょう。

アメリカの場合はそれでもまだ、「人生は選択の連続でできている」という概念が、日本よりは浸透しているような気がします。子育てのさまざまな場面で、子どもに何かを決めさせるときに、”It is your choice”という言葉が聞かれます。

また「テスト勉強しなかったから、テストで悪い点をとった」ということがあった場合に、自分が選択したこと(勉強をしなかった)と、その帰結(悪い点をとった)を結び付けて、言語化して説明することで、子どもが結びつきをはっきり意識するようにしています。

もし子どもが自分の選択を後悔しているような場合には、”It is ok, you can make a better decision next time”という言葉かけをすることによって、その選択から学んだことを次の機会に生かしてほしい、という思いを伝えています。

幼少期から多くの小さな選択をさせて、その帰結を本人が味わう、という経験を繰り返し、また言語化をして子どもの理解を助けることによって、よりよい選択ができる大人に育てよう、という意識が浸透しているのです。

自分の人生において大事なことを自分で決めていく、というのは、自己受容という意味においてもとても大切なことです。

教育の場面だけでなく、子ども自身が人生に関わる大事な選択をしているのだ、ということにもっと自覚的になれるようなコミュニケーションができたらいいな、と私は考えています。

by 塚越 悦子

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クラウドファンディングページ

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