クリティカルシンキングについて:後編 <親子でできる日常習慣編>

前回の記事では、(タイトル訳)「優れた子どもを育てるために科学的に導き出された方法とは?」)(タイトル訳)「優れた子どもを育てるために科学的に導き出された方法とは?」)のなかで21世紀の「子供達の成功を測る指標」6つのCのスキルと、6つのCの1つであるクリティカルシンキング4段階の習熟度目安を紹介しました。

今回の記事では、クリティカルシンキングのレベルアップを図るために親子で実践できる日常習慣例を本書から紹介します。


自分自身へのトレーニング法

 

クリティカルシンキングの実践ステップは、5段階あると言われてます。

  1. まずは自分の中で質問を問いかける
  2. 情報を収集する
  3. 仮説を組み立てる
  4. それが短期、長期スパンでどのように機能するのか考える
  5. 最後に他の人の意見にも耳を傾け、批判的なスタンスを継続する

ー 「〜らしいよ。」と口ずさむことがしばしばあると心当たりがあるようでしたら、前編で紹介したLevel3で行き詰まっている状態です。自分なりに一度思考を巡らせ問いかけることからスタートしていきましょう。筆者自身も含め、遠慮して質問できていない状態もこのレベルに留まってしまっていると反省してます。

ー 何かを書いているとき(E-mailやインターネットの記事など)も、意見を発信して、結論だけを言って終わりにしていませんか?Level 4まで行き着くには、その理由を説明することが鍵となります。そして事実の中で、”Who says what to whom?”(誰が何を誰に?) と問いをを繰り返していきながら、議論をクラフトする(作っていく)ことが肝となります。

子どもへのトレーニング

 

著者キャシー氏は、「わたしたち大人が、今、子どもに対して行うことは、子どもの今後20年にとって重要なものとなります」と、子どもとの接し方が非常に重要であることを言及しています。

ー ゲームは特に、ルールが基礎となっていて、ルール違反を起こした時にクリティカルシンキングを鍛えるのに適しています。ゲーム相手とどちらが勝ち負けなのか言い争う時は、特に「反対する立場をとる」力を養うといいます。兄弟や友達と対立する場面にたったときに相手を尊重する姿勢を養い、その過程で交渉力も鍛えていきます。

ー 大人たち自身のパーソナルなストーリーを話すことも効果的です。両親や幼稚園の先生が、子どもに自分がその子の年齢だったとき何をしたのか、子どもたちは興味深く知りたがります。子どもが大人に質問を投げかける練習に絶好のトピックとなります。最後まで理由や背景を事実に基づいて答え、子どもの質問力が高まるよう導いてあげましょう。

ー 本を読んであげることも絶好の機会です。物語が驚く展開になったとき、子供達はよく「これは本当?」と質問を自然にしてきます。物語とは違う結末を子どもと一緒に想像してみるのもよいでしょう。また、「もしあなたが主人公だったら?」と子どもに登場人物の立場に立って考えさせてみましょう。自分の考えを言語化することで共感力や意見を組み立てる力が養われます。

ー 子供達が質問を投げかける時は、結論を大人が話してしまうのではなく、大人が子供達に「自分で考えてみよう」、となげかけてみましょう。「どうして信号は赤青黄なの?」と聞かれた場合、大人は「赤が止まれで青が進めだからだよ」とありのままの事実を伝えるのではなく、質問をそのまま子どもに問い返します。そうすることで、子どもが自分で答えを導き出す手助けをします。

家庭でクリティカルシンキングを養う環境を創りだすには?

 

第一に子どもへの「尊重」、と著者は明言します。子どもたちが尊重して扱われることで、子ども達の質問は真剣に捉えられ、子供達は安心して質問することができます。そして彼らの目でみた情報(レベル1) からレベル3 - 4まで引き上げられます。2,3歳児であったとしても彼らの興味を尊重することが大切です。配慮に富みきちんと応答する両親は子どもの視点を考慮に入れ、子ども達が理解できる方法で説明します。親御さんの説明力が、子ども達のクリティカルシンキングを育む鍵となります。時間がかかってもこのやりとりを重視することです。そうすることで信頼関係が構築され、あなたの子どもはあなたの知恵、コーチングに頼ることができると理解するからです。そして大人であるあなた自身も同時にクリティカルシンキングを身につけられます。

学校でのクリティカルシンキングの育み方

 

これまでの20世紀型の小中高等学校の授業は知識習得重視のカリキュラムに基づいていたので、クリティカルシンキング養成に対応している学校は一部出てきているものの、まだまだ少数といえるでしょう。日本では2020年教育改革後、アクティブラーニングの導入が開始します。今までは算数や数学は公式の暗記することが目標でしたが、今後は算数のロジックを駆使し、知識を総合的に組み立て、この問題にはこの解決策が当てはまるという思考力、応用力が求められていくでしょう。筆者は以前、日米の算数教育のトレンド比較について米国教育メディアで記事を執筆しましたが、(参考:https://www.edsurge.com/news/2016-02-02-the-math-paradox-what-japan-wants-to-learn-from-the-west) 日本、中国、米国の算数教育は、公式暗記型の算数カリキュラムから、今後思考力を鍛えていく目的へシフトしていくトレンドとなっています。特にプログラミングやデータ分析などのアルゴリズムへ応用してける思考法の基礎を養う方向へと関心が高まっているそうです。算数以外の各種教科も、暗記重視型から思考力養成型へ変わっていくことでしょう。
今、この学校教育変遷期の間は、学校の外のほとんどを過ごす家族との時間で、親子でクリティカルシンキングを養う習慣をつけながら、学校の中で子どもが思考力を発揮できるような流れを家族のサポートの元作っていくことが非常に大切になるでしょう。

さいごに

クリティカルシンキングは、民主主義の社会という文脈でも重要なスキルです。クリティカルシンキングが身についてないと、私たちは問いかけなしに聞いたことを真に受けてしまうことになります。アメリカでは” Making informed choices” 「十分な説明を受けた[知識を得た]上で選択する」が歴史的に人権として重視されてきました。しかしクリティカルシンキングが備わっていない、「声の大きい」リーダーや世論で、根拠のない事実が広まってしまうことも増えてきています。民主主義の中で、事実に基づいた政策、正しく判断した上で国民が投票をしていくことは、今後の時代でますます重要となってくるでしょう。
4月22日のアースデイの日に、全米主要都市、世界各地で”March For Science” 「科学のための行進」のデモ行進に多数の一般市民が参加しました。これはトランプ大統領の科学研究開発費予算カットの意図に対する反対の意を示すデモになります。科学の研究開発、民主主義社会でデータ、事実を基に公正に判断する重要性を改めて民衆同士で分かち合う運動でした。MIT Media Lab Directorの伊藤穰一氏も、ボストンにてMarch For Scienceデモでスピーチをし、サイエンス、エビデンスが与えてくれるパワーはあらゆる人に対して平等な指針となってくれる旨を、ご自身のエピソードも踏まえ語りかけていらっしゃいます。