[書評] 小学校にプログラミングがやってきた(超入門編)

 

著者: 上松 恵理子
武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授

出版社: 三省堂

価格: 1,296円

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私たちの日常生活はPCやスマホといった電子機器や、様々なITインフラシステムの恩恵の中に成り立っています。どれもプログラミングによって生み出された便利なものや新しいもので、その上で成り立っている社会が今日私たちが暮らす情報社会です。もはや私たちの生活に欠かせないものになっている、その様々な便利なものを動かす<中身>がプログラミングです。その教育が、2020年には小学校で必修化になるといいますから、これからの時代を生きる子供達にとって必要なものなのでしょう。ところがしかし、プログラミング、ひいてはプログラミング教育というのがいったい何なのか実のところよくわからないと言う人は案外多いのではないでしょうか。かく言う私もその一人でした。

 昨夏アトリエにて、FutureEdu Tokyo と合同で実施した STEAM キャンプの様子

昨夏アトリエにて、FutureEdu Tokyo と合同で実施した STEAM キャンプの様子

そこでプログラミング教育について身近な友人に聞いてみたところ「覚えさせないと将来子供が苦労する」という友人もいれば、また逆に、「そういった新しい技法の習得を急いでさせろというアジテイトに煽られるべきでない」という友人もいました。両極端の意見のように感じますが、そもそもプログラミングとは覚えさせたり技法を習得させたりするものなのかという疑問が湧きました。

プログラミング教育というものは自分たちが受けてこなかった教育です。教える側にとっても同じことが言えるでしょう。わからなくて当然といえば当然で、わからないから不安でもあります。本書は、私のように迷えるプログラミング超初心者の不安を一掃して、その目的を繰り返し説きながら、その全体像を明確に理解できるよう導いてくれる一冊です。

プログラミング、ゼロからの入門書!と帯にあるように、その初心者にも安易に理解できるわかりやすい平易な言葉で解説されており、専門用語についても巻尾の用語集が大変役に立ちました。ともすると複雑で難解と捉えられる事柄を、身近な料理などに例えて解説する部分などは、見知らぬ世界だと怖がることなくその世界へと安心して足を伸ばすことができました。

また、”はじめに”に書かれているように、”好きな場所から読んで”理解を深めて行ける編集となっているのが大変に良いです。本書の中に、教育が主体的な学びである必要性が説かれている通り、本書の構成も、自分が理解を深めたいことを自ら見極め、学ぶ順番や手法を決めて読み進められるように工夫がなされています。自分の頭の中の情報を把握し分割し、そのひとつひとつをクリアにしながら時に複数の思考を同時に動かし、物事を多角的な視点で捉え知識を整理し理解を深めて行くという学習法は、プログラミングをする際の思考<コンピュテーショナルシンキング(093P)>にも繋がると言えるかもしれません。

さて本題。冒頭にも記した、そもそもプログラミング教育とは何を目的としているのかという根本的な問いには、最初のSECTION1で明快に答えてくれているのですが、その後も本書の中で繰り返し取り上げられています。プログラミング教育とは、時代を超えて普遍的に求められる新しい力を身につけること。”あえて1つに絞るとするならば、『創造力を高める』こと(091P)”と本書は解いています。"プログラムとは、人の手順を記述したものであり、組織の運営方法を定めることも、さらには国家の政治を考えることもプログラミング(092Pより抜粋)"であり、その意味を辞書で引くと"国政を料理するといった例文もある"そうです。ここで言う『創造力』と言うのは、”プログラミングを通じて理論的思考を身につけることについては他の教科でもやっていること”と本書がいう辺りを深読みすると、私の想像よりもずっと広い意味を持つ新しい創造力であると言えそうです。

新しい『創造力』がなぜプログラミングにより高められるのか。体的にどういう環境で、どういう風に学べば、楽しく熱中して学べるのか。世界の国々ではどんなプログラミング教育が行われているのか、その言語にはどんな種類がありどのようなメリットデメリットがあるのかなど、実に具体的な例を挙げ解説されています。パソコンなどのデバイスがあれば、本書を片手にすぐにでもプログラミングに挑戦することも可能ですので、ご家庭などで実際にチャレンジしていただけると良いのではないかと思います。

本書のはじめに「今日の小学生が大人になったときに就く職業の65%は、現在まだ存在すらしていないものであると言われている」とあるように、予測不可能な世界の中で、急速な技術革新が起き情報化が加速する世界を、これからの子供達は生きていくわけです。プログラミング教育が、彼らが将来どのような職業に就くとしても、時代の変化を超えて普遍的に求められる広い意味での『創造する力』を育み実生活の中で生かしていける身体的な知識とできる教育となるよう、その真の目的を正しく理解し心に刻み、小学校にやってくるプログラミングを迎え入れたいものです。

 

 上の写真と同じサマーキャンプでの様子。コンピュテーショナルシンキングを学べるゲーム、OSMO をデモ中。

上の写真と同じサマーキャンプでの様子。コンピュテーショナルシンキングを学べるゲーム、OSMO をデモ中。

 

著者プロフィール

青柳 みどり

『してみたい』から全てが始まるアート実験アトリエ、ミロ美術共育実験室主催。美と音と日本の祭りで繋がる地域コミュニティ創造活動団体〜美音彩〜世話役。創造性共育士。こども環境学会会員。港区シンクタンク構想メンバー。レッジョエミリアアトリエリスタ講座修了。日本きものコンサルタント協会会員。

公式フェイスブックページ:https://www.facebook.com/miroartwokshoplabo/