授業を「リデザイン」する - 東京都立武蔵高等学校・附属中学校指導教諭 山本崇雄先生 

"What School Could Be" アン/カンファレンスイベント開催レポート 第1回は、「なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか」など数多くの著書も上梓されている、東京都立武蔵高等学校・附属中学校指導教諭 山本崇雄先生による、「授業を「リデザイン」する」というテーマの分科会です。

授業を「リデザイン」する

「あなたの理想の学校は?」こんな問いからセッションは始まりました。sugukiku.comで会場の属性や意見をリアルタイムにプロジェクタに可視化しながら議論は続いていきます。まず、3~4名のグループで着席、グループ内で自己紹介をします。次に、一つ目の問「あなたの理想の学校は?」をThink-Pair-Shareでチーム内、全体で共有後に、メンバーチェンジをして前のチームの内容を共有。その後2つ目の問に移っていくというワールドカフェ形式で行われました。

問1:あなたにとって理想の学校とは?キーワード、絵でもなんでもOK

生徒さんが描いた理想の学校の絵の紹介

生徒さんが描いた理想の学校の絵の紹介

中学一年に同じように聞くとこの様な特徴が見られるそうです

  • 自由な発想で、絵を描いてくれる。
  • 緑がたくさんあったり、仕切りがない教室だったり、ガラス張りの教室だったり

問2:あなたの授業改革を阻害しているものはなにか? 様々な意見が参加者から上がりました。

 

  • 変えないほうが楽だから
  • 入試
  • 自分自身が固定概念にとらわれている
  • 何やっていいかわからない
  • 形骸化していて、改革を何のためにやっているかわからなくなる。
  • 過去の成功体験(こうやったらうまくいった)
  • 大人のものさし(固定概念)
  • 大学の授業は各科目の専門性があるが、連続性継続性がない
  • 理念があいまい、評価するための試験
  • 上位概念の議論にならない、方法論
  • 自分の価値観をどうくずすのか?
  • 非認知能力の重要性わかるが、そこを素直にほめて
  • 学びなおしを許容できない
  • 正解を求めなくなった
  • ルールを変えるのはどうしたらいいのか?
  • 選択できる自由がない
  • 単位数をこなすことが目的になってしまう
  • 売れることを考えて教科書をつくってしまう
  • 役に立つ、役に立たないで判断してしまう
  • 自己変容することへのわくわく感がない
  • 社会の変化に恐れを抱いている
  • 自分は変わっていいと思えない

セッション1参加者からの意見

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セッション2参加者からの意見

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山本先生は、授業のリデザインを実践するために、このような授業改革に取り組まれているそうです。

◆時間割は壊せないが、50分の授業内での教師の枠はこわせる〜Multitasking with Time-management

 

50分の時間の中で生徒のTo-Doリストを作って、生徒がやりたいことをストップウォッチを使って時間管理しながら活動していく。

・ウオームアップ ○○分(歌、ゲーム、クイズカード)

・Review(復習) ○○分 学びを復習(教科書の内容)

・メインアクティビティ:プロジェクト学習でゲストティーチャーを招待し、リアルな社会との接点を設ける

理想の教科書 1年(出版社に来てもらってフィードバック)

SDGs(Sustainable Development Goals~持続可能な開発目標)専門家から話を聞く)

・取り組むうえで大切にしていること 日本には、宗教がないのでお互いを思いやり、違いを認めながら折り合いをつけていくことを教えなければならない。リアルな社会では会社は、Public Relations(高い倫理観、自己修正能力、双方向性コミュニケーション)を大切にし、他の会社や顧客と折り合いをつけながら活動している。これを教室に下ろした時、高い倫理観をどう教えるかが重要。教室では、グループメンバーがハッピーかどうか?を考えさせている。全員を好きになる必要はないが「ハッピーかどうか?」を考えられるようにする。 参考:パブリック・リレーションズ(PR)とは、個人や組織体が最短距離で目標や目的を達成する、『倫理観』に支えられた『双方向性コミュニケーション』と『自己修正』をベースとしたリレーションズ活動である

 

◆同僚との関係

誰に教わっても大丈夫な自立した生徒を育てることを目指している。そうすれば、同僚は困らない。両国高校で6年で育てたことを1年で実践することができた。今は1学期でどこまで自立させられるかを実践している。

限られた時間で実現するため学びのフレームワーク(ノート作成)

①    問いを作る (中学生から割とできる。問い作りをしたことのない高校生にとっては難しいが、グループで繰り返し様々な問いに触れ、少しずつおもしろい問いを作れるようになる)

②    わかったことを絵にする(ストーリーマッピング)図でもいい。

③    要約(わかったことをことばで表現する)

④    自分オピニオン(達成したこと、考えたこと) この取り組みで表現の幅が広がっていき、深く考えるようになるので最終的に学力の定着にもつながっている。

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サポートスタッフ、永島 宏子さんによる所感

「一部二部ともに、参加者が学校現場で思っている課題をまずはグループでそれぞれ意見を出し合って、同じ思いに共感しつつ、緩やか雰囲気で全体にもシェアできるよう進行された。 その後、山本先生が実践例を紹介しながら、まずはできることから改革を始めてみようというポジティブ空気がみなさんにも伝わったように感じた。」

参加者の感想

「こんな風に状況や結果を即座に「見える化」することで、さまざまな立場や意見があることに安心感を持てること、 参画意識が高まることも体感しならの参画型... 楽しかった。生徒たちの理想の学校に対する発想にも刺激を受けた。 」

「みなさん、同じ思いで参加されていて、合意することの醍醐味を感じました。元気出ました。 」

「もっと時間があると良かったです! 」

「先生方の本音を聞けたり、理想論ではなく具体的に授業を変えるにはどうすればいいか考えを出し合ったりと、とて も有意義な時間を過ごせました。ありがとうございました!」

山本先生の著書とウェブサイト

なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか