21世紀に相応しい革新的な教育を考える 「Most Likely To Succeed」 上映会レポート (in Japanese)

(by Chieko Tamashima)

今の日本の教育システムに疑問をもった事はありますか?自分が学生だった時分には諦めの気持ちで従っていた大人達も、いざ自分が子供を持つ段階になって、再び同じ疑問をより深刻に抱き始めている方も多いのではないでしょうか。今の日本の教育システムで未来に活躍でき、世界に通用する人間に成長することができるのだろうかと。

人口知能やロボットがニュースを賑わせているように、ホワイトカラーの仕事の存在も危うくなると言われる新産業革命は既に始まっています。テクノロジーが今までにないスピードで進化するゲームチェンジの時代に、私たちはどのような教育環境を目指すべきなのでしょうか。

このような問いに対して、教育者、親という立場を超えて話し合う場として、6/8に東京の SmartNews のイベント会場でアメリカで話題の教育ドキュメンタリー「Most Likely To Succeed」の上映会を開催しました。英語字幕のみの開催にもかかわらず、70名もの方にご参加いただき、日本での教育への関心の高さを感じさせられました。

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私たちが紹介した作品は、2015年のサンダンス映画祭など数多くの映画祭で公式作品として上映されている「Most Likely To Succeed」です。「教育ドキュメンタリー作品の中で再候補の一つだ  By Education Week」と賞賛されるフィルムで、主に自主上映会を通して全米で広まり話題となっており、日本では今回が初めての公開上映となりました。

このドキュメンタリーは、Alternative School(オルタナティヴスクール)と言われるアメリカを中心に起こっている革新的な教育を実践している学校について取り上げています。現在、私たちが慣れ親しんだ教育システムというものは、はるか昔の1893年の工業化時代に考えられた仕組みであり、新たにITやテクノロジーが飛躍的に世の中を変えている21世紀に相応しい教育システムが必要であると言われています。実際「現在小学生の65%は、将来的に今はまだ発明されていない仕事をすることになる」とアメリカの政府調査結果でも発表されています。21世紀に相応しい人材をどのように育てるのか、という大きな課題への先進的な教育者の試みがこのフィルムでは紹介されています。

先ずは上映の前に、事前知識としてFutureEdu Tokyoの竹村と吉川から、アメリカの教育環境についてプレゼンがありました。アメリカでは日本と違って、さまざまなタイプの教育機関があり自分の子供にあったものを選択できる環境があるそうです。学校の数で言うと、公立や私立の学校以外に、1992年頃から登場したチャーターやホームスクールがここ10年で2〜3倍の伸びを見せており存在感をだしてきているとのことでした。

このようなオルタナティヴスクールの中でも注目の4校について、現地で視察してきた感想も含め紹介がありました。それぞれの学校については、後日ブログで紹介していきます。

Blue School     2006年にBlue Man Group(東京でも公演のあったオフブロードウェイパフォーマンス)の創設者によって設立

Alt School        Googleの元幹部エンジニアが2013年に設立したマイクロスクール。マークザッカーバーグも投資家に名を連ねる。

BrightWorks    コンピューターサイエンティストでメイカーキャンプ、Tinkering School を長年運営している教育者が2013年に設立

HighTech High   Qualcommの創設者の息子が設立資金を出し、2005年に創設したチャータースクール

そしていよいよ作品の上映です。このドキュメンタリーは、High Tech High にフォーカスして密着取材したドキュメンタリーです。映像に映し出される アメリカ・サンディエゴのHigh Tech Highの校舎は日本のものとは全く違い、自由でイノベーティブな雰囲気であることはもちろん、学習法も従来とは異なります。教科書やカリキュラムを使わない、テストや成績もない「プロジェクト学習法(Project Based Learning)」を実践しています。革新的なプロジェクトを中心に据えた課題解決型の学習法で、グループ単位で1つのプロジェクトに取り組み、学期末に一般公開される展示会に向けて作品を作成します。プロジェクトに必要な基礎知識を学び、その知識を応用させながら課題解決を実施していくのです。

グループワークの中での失敗や成功を通じて人間的にも成長していく姿が映し出されていきます。「私はシャイだから。。」とみんなの前で話す少女が1つのプロジェクトを通してリーダーシップをとるまでに成長する姿が描かれるなど、子供達に密着したリアルな現場を垣間見ることができました。上映会の会場では、特にこの少女に自分自身や自分の子供を重ね合わせて涙を浮かべる参加者もいたようでした。

また同時に、子供を通わせている親の正直な気持ちである、革新的な教育法への不安も紹介されていたり、教育者自身も正解のない世界で試行錯誤を重ねている姿が映し出されるなど、とても謙虚で正直な姿勢が伝わって来る、一緒に21世紀の教育システムについて真剣に考えさせられる内容となっていました。

上映後は参加者同士のディスカッションが行われ、とても熱気のある議論が交わされました。最後に回収したアンケート結果からもとても満足いただけたようで、「イベントを5段階で評価してください」という質問に何と60%の方が最高評価の5をつけてくれました。良くなかったという方は0人というとても満足度の高い上映会となりました。

21世紀教育について、教育者、親という立場を超えて話し合うコミュニティに参加してみたい方は、第二回目の上映会 が 6/18(土) に西麻布で開催されます。あと数名お席がありますので、前回見過ごした方は是非ご参加ください。

最後に、この素晴らしい会をサポートいただいた、スマートニュースさんに心から感謝申し上げます。