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年末年始から始めたい!「学び」を考える40冊 part 3:「深い学び」を楽しむ人になる(2022-2023年版)

「学び」を考える40冊の3日目は、”「深い学び」を楽しめる人になる”がテーマです。多様なフィールドで活躍される選者より、人生のどんなフェーズでも役に立つ、学び方が学べる良書をご紹介します。

Part 1: 保護者や教育者としてのあり方を考える (12/26)

Part 2: 多面的にこれからの「学び」のあり方を考える (12/27)

Part 3: 「深い学び」を楽しむ人になる (12/28)

Part 4: 子ども部屋に置いておきたい、親子で読みたい (12/29)

視点を取り戻す・拡張する

スマホ時代の哲学 失われた孤独をめぐる冒険

著者:谷川 嘉浩

単行本(ソフトカバー):312ページ

出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン (2022/11/18)

推薦者:ミロ、美術共育実験室 ミロアートラボ

おすすめポイント:「わたしたち人類が根源的に持つ、自分の頭と心と手を動かして「何かをつくること(表現、創造)」「見つめ感じること(鑑賞、想像)」と言った、藝術(アート)の持つ可能性を示唆する、瑞々しい提案がなされています。」

こんな人に読んでほしい:「スマホをついつい触っている方に。そして、じぶんらしさを十全にひらいて、感性を響かせあって生きるのは、悪くないんじゃないかな?という問いに「まぁ、そうかもね」と感じた方に。」

ミロさんからの、親子で読みたいもう一冊のおすすめはこちら:名前のチカラ(たくさんのふしぎ2022年12月号) Kindle版

編集部から:「巨人の肩にのる」という表現がありますが、本書は、「生きる」といった本質的な問いに向き合っている哲学者の教えを、常時接続時代に生きる私たちに向けて、見どころ案内的なトーンで紹介することで、哲学にゆるく関心がある人も肩に乗っかりやすくしてくれる一冊です。ミロさんが見出された、本書が示唆するアートの持つ可能性については、是非ご自身で読み解いてみてください!

参考記事:常時接続で失われた孤独。あるいは「長い思考力」。哲学者・谷川嘉浩氏インタビュー (Less is More)


「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考

著者:末永 幸歩

単行本 (ソフトカバー) : 344 ページ

出版社: ダイヤモンド社 (2020/2/20)

推薦者:たいそん、追手門学院中・高等学校

おすすめポイント:「アートの視点をもっと教育に。広く読まれている本だと思いますが、「自分にしかないもののミカタ」を大切にできるよう、何度も読み直したい本です。」

編集部から: 良質な対話や経験を通じたプロジェクト型学習を実践される、たいそん先生によるおすすめの一冊。経験価値を豊かにするために「みる」力を磨くことは大切です。アート鑑賞を通じて「みる」力を育むことはどういうことなのかというのを分かりやすく教えてくれる一冊。

たいそん先生達が発信されている探求科のメディア、O-Drive にも、「みる」力がついた生徒さんの経験談や有識者インタビューなど掲載されています。


Hunt, Gather, Parent: What Ancient Cultures Can Teach Us about Raising Children (Kindle版)

保護者向け(洋書)

著者:Michaeleen Doucleff

電子書籍:351ページ

出版社:Thorsons (2021/3/4)

Hatchet: 30th Anniversary Edition (Brian's Saga Book 1)

10-14歳のお子様向け(洋書)

Gary Paulsen (著), Drew Willis (イラスト)

電子書籍:209ページ

出版社:Simon & Schuster Books for Young Readers (2009/8/21)

推薦者:鈴木絵里子、Kind Capital CEO

おすすめポイント:「狩」と言うテーマの共通点で保護者向けとお子さん向けに一冊ずつ選ばせて頂きました。Hunt, Gather, Parentは新書で、世界中の先住民族や採集狩猟文化では、いかに子育てが落ち着いた自然なものであったかを語っています。

現代の子育ては、親が子供に過度に貫入してしまったり、心配してしまったり、意思疎通がぎこちなかったり。もっと親自身が落ち着いて、子供をチーム・族の一員として静かに受け入れる方法を伝授してくれます! 

The Hatchet は北米圏で大ロングセラーのシリーズ本であり、少年が山奥で遭難してしまい、そこで一生懸命サバイバルをしていく冒険小説になります。

編集部から:社会は変われど、我々の脳神経は狩猟採集社会のころからさほど変わっていないそうです。そう考えると、狩猟採集社会での子育てについて知ることは、現代社会における人間にとって不自然な状況を理解することは有益ですね。

The Hachet は思春期のお子さんに向けた、試練から自己理解や他者理解を深めていく冒険物語。ネイティブのお子さんだと10-14歳の小学校高学年から中学生向けとなっていますが、日本の場合は英語の得意な高校生から大学生向けかもしれません。無料サンプルでまずは試してみられる事をおすすめします。


不便益のススメ: 新しいデザインを求めて (岩波ジュニア新書)

著者:川上 浩司

新書:176ページ

出版社:岩波書店 (2019/2/21)

推薦者:みつえ

おすすめポイント:「「不便益は関係性と多様性を回復させる試み」です。今まで見過ごされていた価値を再評価できる機会になります。内容もわかりやすく、読みやすいのでおすすめです!」

こんな人に読んでほしい:「モノづくりを通したコトづくりに興味がある方」

編集部から:便利になるというのは、先人が抱えていた大きな課題が解決されたということですが、逆にその状況を巻き戻してみることで、誰が、どうして、今のようなソリューションを生み出したのかという本質に目が向けられると同時に、一見不便と見える事も今の時代には有用、必要だと思われることもあるのだなと気付かされました。


学び方を学ぶ

システム思考をはじめてみよう

ドネラ・H・メドウズ (著), Donella H. Meadows (著), 枝廣淳子 (翻訳)

単行本: 80ページ

出版社: 英治出版 (2015/12/8)

推薦者:熊平美香、21世紀学び研究所 代表理事

おすすめポイント:「VUCA時代を幸せに生きるために欠かせない「システム思考」を身近に感じることができます」

こんな人に読んでほしい:「子育て中の保護者の皆さん、中高生の皆さん」

編集部から:『世界がもし100人の村だったら』のドネラ・メドウズ氏によるエッセイ集。多くの社会現象は、システム(さまざまな要素がつながることで一定のパターン認識できる状況を生み出す仕組み)としてどう成り立っているのかという視点で考えると本質への理解につながります。気候や人工知能(AI)といった破壊的な力を持つ事象も、システムとして様々な要因のつながりを理解することで、わたしたちが理解しやすくなるのです。システムという観点で世の中の現象を捉える「システム思考」のイメージを掴むことができる導入的な一冊です。


科学的思考のススメ:「もしかして」からはじめよう

牧野悌也 (著), 菅原 研 (著), 土原和子 (著), 村上弘志 (著)

単行本(ソフトカバー):248ページ (2021/12/14)

出版社:ミネルヴァ書房

推薦者:山本秀樹、AMS合同会社/Dream Project School

おすすめポイント:「情報判断力や創造的思考力の基礎となる、仮説の立て方とその検証方法を高校生くらいの解り易い言葉で解説している良書です。」

こんな人に読んでほしい:「前例のあるものではなく、自分で何か新しい発見を導いてみたい人、学校の探究学習よりもより一歩踏み込んだことをしてみたい人にお勧めです。」

編集部から:科学的思考を身につけることで、学問的なことだけではなく、人生でより良い選択をする力を身に付けてほしいという著者の意図により、理科嫌いの人にもスッと入ってくる内容です。また、まなぶ、みがく、つかうという分かりやすい3部構成で、4コマ漫画や例題も豊富におり混ぜられているので、中高生からおすすめの一冊。


リフレクション(REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術

著者:熊平 美香

単行本:384ページ (2021/3/19)

出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン

推薦者:竹村詠美、FutureEdu 編集部

おすすめポイント:「 家庭も学校も企業も、構成メンバーが影響しあうことで、成長や、それに伴う変化を支え合うことができます。このようなポジティブな学びと成長の文化づくりの根底に求められるのが、個人単位、チーム単位、組織単位での内省のスキルや習慣です。本書は企業内個人やリーダーに向けて書かれた本ですが、企業や組織で内省の文化を育むための考え方やツールを学ぶことで、保護者や教育者が職場や家庭にて、内省を様々なシチュエーションで実践してみることを、具体的なツールや事例で応援してくれる一冊です。」

こんな人に読んでほしい:「 教育関係者全般・小中学生や高校生の保護者」

異なる切り口からのリフレクション本:リアリティのある学校での授業実践のストーリーをベースに学べる『読んでわかる! リフレクション みんなのきょうしつ』もオススメです!


学びに向かう土台を育む

言葉はこうしてうまれる

モーテン・H・クリスチャンセン (著), ニック・チェイター (著), 塩原 通緒 (翻訳)

単行本: 384ページ

出版社: 新潮社 (2022/11/24)

推薦者:山ちゃん

おすすめポイント:「 人はいかにして学び、ことばを獲得するのか。認知科学によって明らかになった学習の「即興的なプロセス」は過干渉でも傍観でもない新しい関わりを提案してくれます。 」

こんな人に読んでほしい:「 子どもとどう関わったら良いのかを、科学的根拠に基づいて考えたい全ての大人にオススメです! 」

編集部から:認知科学の研究者で元小学校教員の山ちゃんオススメの本は、いつも読み応えがあります。30年に及ぶ共同研究での成果としてあらわれた、どうやってひとは言葉を学ぶのか、という知見をお子さんとの会話でも活かしてください。


生き抜く力をはぐくむ 愛着の子育て

ダニエル・J・シーゲル (著), ティナ・ペイン・ブライソン (著, その他), 桐谷知未 (翻訳)

単行本(ソフトカバー): 320ページ

出版社: 大和書房 (2022/5/6)

推薦者:竹村詠美、FutureEdu 編集部

おすすめポイント:「乳幼児期に保護者(もしくは近しい役割を担う大人)と十分な愛着を築けたお子さんは、未知の冒険にチャレンジする意欲も盛んで、自己調整力や他者との関係性の形成も比較的上手であることが研究で明らかになっていますが、どのようにお子さんと接することで、過度に甘やかすのでもネグレクトでもない、お子さんの健全な発達を促すことができるか?という問いに、4つの愛着形成のポイント(安全、見守り、なだめ、安心)の具体的な実践方法を通じて学ぶことのできる、愛着形成への入門書です。今までシーゲル先生のオンライン講座に参加させて頂く中でも、愛着(アタッチメント)形成が十分出来なかったことで、大人になって苦労されている参加者の方々のお話などを伺う機会もあり、重要性を再確認させて頂きました。早期教育やお受験を心配する前にまず読んでいただきたい一冊です。」

こんな人に読んでほしい:「 乳幼児期のお子さんの保護者、教育者、教育福祉関係者」

企画編集:竹村 詠美


最後に。。。

本特集はお子さんの成長をサポートするために有益な一冊という視点で選書していますが、お子さんがしっかり育つには、親御さんが精神的に、身体的に良い状態でいられる(ウェルビーイングの状態を保てる)こともとても大切です。

子育てで完璧を目指す必要はありません。是非ご自身も学ぶ力をつけながら成長の喜びを体感し、過去の経験を失敗と捉えず、ご自身を労わりながら、時には寄り道しながら自分らしく取り組んで頂ければ幸いです。


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