Future Edu Tokyo

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新年のご挨拶:教えるのでもなく、教えられるのでもない、共有、気づきと対話の渦が広がる1年を目指して

これからの時代に相応しく、子供それぞれに合った学びについて共に考える為のメディア型コミュニティとして2016年6月にスタートしたFutureEdu Tokyoも、気がつけば3年目に入りました。より活動に深みを出していきたいと考え、昨年度末に有志団体を卒業し、一般社団法人として新たなスタートを切ることになりました。

昨年度は、21世紀教育にまつわる情報発信、モンテッソーリ教育などのイベントや、200名教育者が学校の可能性を考えるカンファレンスの開催子供向けSTEAMキャンプなど実施しましたが、特に力を注いだのは、映画上映会を通じた対話の場の全国への広がりの支援活動です。Most Likely to Succeed (教育ドキュメンタリー映画)の日本アンバサダーとして、上映会&ワークショップの開催を主催および支援し、1年前には10箇所の上映実績だったところから、年末には120箇所以上に増えるまでになりました。地域としては22都道府県で2000名以上の方が、作品を見て、集まった場の仲間と意見交換をする機会が生まれました。多様な立場の人が参加してくださり、どの立場の方からも高い評価を頂いております。作品の魅力に気付いて頂き、勇気を持って上映会を開催頂いた皆様にとても感謝しております。 また昨年度末からは、映画の舞台のHighTechHigh という米国の学校で実践しているプロジェクト型教育研修を、経済産業省の「未来の教室」実証事業の一環として実施する、Mistletoe 株式会社一般社団法人こたえのない学校との協働プロジェクト、SOLLAとしての活動を開始する機会も頂きました。

Most Likely to Succeed 上映会波及状況 (2018年12月末)

上映会参加者プロフィール

映画の評価

映画を通じて「100%アクティブな学びが営まれる場」における子供達や親、教師の葛藤や成長をリアルに感じる事で、普段日々の生活でじっくり考える時間のない保護者、教員、教育関係者、そして学生の皆さんが、「より本質的な、学びの環境はどうすれば実現するのか?」というテーマに向き合って頂けたことは、学びの環境の改善を自分ごととして捉える一歩として勇気のある行動だ思います。今年は、踏み出す一歩についての具体的な事例なども紹介ができればと考えています。

iTunes や Netflix などの動画配信サイトも数多くある中、敢えて仲間で集まって見て話す、という地道な方法をとっているのは、一人で感じたことを抱え込むのではなく、対話を通じて、より自らの思いに鮮明に気づいて頂き、どの様な一歩を踏み出したいのかを考えるキッカケになればという製作者の思いからです。120+回の上映のうち、20回は我々が主催およびワークショップのファシリテーションをさせて頂いたことで参加者の方々と対話の機会を持つことができ、対話の重要性を確信しました。またより鮮明に、FutureEdu のミッションでもある、未来を見据えて、子供一人一人にあった学びをデザインする仲間が各地域にいる事の重要性も痛感しました。

多様な子供達が各地域にいる中で、一人で正解を見つけることは難しいです。自分の子供の事だったとしても、子供達を支えている学校や同級生の状況を知らずに、次のステップを考えることは難しいですし、同じ悩みを持つ仲間で話す事で、新たな気づきが生まれることもあるはずです。各地域で孤軍奮闘されている保護者や先生方も多くいらっしゃる一方、本作品などの刺激で新たな気づきがあり、現状から踏み出していかれたいと感じられた方にも多く出会った1年でした。

今までの日本の政治や教育はどちらかというと与えられるものという風に捉えている方が多いと思います。自分も実はそうでした。しかし、10年後、20年後に現在の32倍、1028倍に進化していく機械インテリジェンスが社会をどの様に変化させていくのかは誰にも分からないというのが正直なところです。誰もわからないのであれば、これから社会に羽ばたく子供達が、自らの未来にオーナーシップを持ち、社会のデザインに貢献する力を身に付けることは必須です。上映会での対話は、このようなテーマの是非について話し合ったり、どう実現するのかを妄想しあうのに良い機会になっています。

昨年末に Fuzzy and Techie という書籍の書評でも紹介しましたが、機械インテリジェンスが席巻する時代だからプログラミングを覚えれば良いと言うことではなく、地域や国、世界の課題を捉え、複雑に絡み合う要素を意識しながら、自ら問いを立て、進むべき道を仲間と考えていける子供達こそが、これからの未来を幸せに生きる力を持つと、上映会の活動や、テクノロジー業界でAIを活用する立場の経験を通じて確信を持ちました。自分自身25年間テクノロジー業界にいますが、ツールが安く簡単になっている今の時代は、最新のテクノロジー動向に右往左往するよりは、歴史や文化、心理学など、幅広い教養を身に着けることで、心を通わせるコミュニケーションや、支持されるサービスや製品を生み出していく力をつけることが大切だとひしひしと感じます。テクノロジーが解決してくれることは飛躍的に増加していきますが、テクノロジーに使われるのではなく、使いこなすことで周りの人たちを幸せにしたり、地域や社会の課題を解決するマインドセットや考え方を子供達が身につけられたら、スキルは必要な時に、いつでも身につけられると思います。 私見ですが、スキルは必要な時に覚えないと定着しないので、生涯活用できるマインドセットや考え方を子供時代に育むというのはとても理にかなっています。

最後にコミュニティについての考え方をお伝えします。教育方針を他人任せにせず、子供達の学びに関わるより多くの大人達が (保護者、教員、教育委員会など)学びながら考え、子供達の意見も取り入れながら、時には迷いながらも前進するコミュニティが全国に増えると日本はどうなるのでしょうか?私は、日本全体に人間性溢れた学びの場が増え、地域の人材が育つ基盤が整っていくと思います。

嬉しいことに、学びの環境の改革に志を持って活動をされている先生や団体、企業が全国的に増えています。点と点の動きがより繋がり、うねりが見え始める一年になることを願い、我々も上映会活動だけでなく、これからの学びを考えるために有益な情報発信や、関連イベントの提案・ご紹介を行っていきたいと考えております。

今年も多くの保護者や先生方、教育に関わる大人たちや学生さんと沢山のお話ができることを楽しみにしております。 FutureEdu 共々よろしくお願いいたします!

一般社団法人 FutureEdu 代表

竹村 詠美