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ギフティッドとは? ~ ギフティッドカンファレンスからの5つの学び

6月8-9日の2日間、開催6回目となるギフティッドカンファレンスがスクエア荏原にて開催されました。主催の日本ギフティッド協会は、長年米国でギフティッド教育の現場で活躍され、現在日本を軸足に置かれている今瀬先生と、米国を中心にギフティッド教育に従事されているエリン・スターリング先生が主宰するNPO法人 Feelosopher’s Path により運営されてます。

今瀬先生は、日本で「ギフティッド」という言葉自体が知られてない事が多く、知られていても誤解をされていることも多いと以前から仰られていました。その課題定義を伺って自分自身も確かにきちんと理解できてないと気づかされ、今回参加することにしました。

二日間、様々なテーマの講演や懇談会などが実施されていましたが、本日は、今瀬先生の基調講演から学んだことをお伝えします。

学びその1:「ギフティッド」という言葉は教育用語で、義務教育機関で使われる言葉。通常の学校教育の枠を超える支援や活動を必要とする子どもや若者を表現する言葉であって、医療用語ではない。

なんとなく「天才児?」というイメージもつきまとう「ギフティッド」という言葉ですが、アメリカ合衆国での定義は以下だそうです。

“生徒、子供、若者で、知性、創造性、芸術、リーダーシップ、あるいは特定の学術分野において高い能力、素質を示し、また、そうした素質を十分に開発するために、通常の学校教育にはない支援や活動を必要とする子供、若者”

すなわち、対象は子供、若者であり、大人ではない。なぜなら、適切な教育環境を必要する子供、若者のために考えられた教育用語だからです。また、言葉が生まれた背景として、ギフティッドに当てはまる素質のある子どもの力が存分に発揮されるためには、通常の学校教育にはない支援や活動が必要だという事です。

日本の学習指導要領では年齢と科目ごとに学習内容の到達度の目安が示されていますが、ギフティッドの子ども達は、その目安の範囲で成長する部分とそうでない部分を抱えて生きています。本カンファレンスの紹介ページで、非常に解像度が高く説明されています。

学びその2: IQ の高さが判断基準の1つという事もあり天才児というイメージが付きまとうが、必ずしも従来型の受験に向いているという訳ではない

IQ でいうと130以上の子ども達(全体の約2.15%)がギフティッドと定義されるそうですが、必ずしもIQが高い = 従来型の受験に向いているという訳ではない様です。この子達に必要なのは、”ベストフィット"であり、一人一人にあった挑戦なのだそうです。すなわち偏差値の高い学校がベストフィットでない可能性もあるという事です。

ギフティッドの子ども達は、ある分野で一般の大人には見えないものが、非常に高い解像度で見えたり感じられたりするそうです。例えばある生徒さんがとった作品は、木の上に子どもが60分いるというだけの映像だった事もあるなど、一般の大人が気づかないところに高い解像度で面白さを感じる事もあるのだそうです。先生の向き不向きがあるというのも頷けますね。

学びその3:しっかり子どもとしての成長の機会を与える

(IQが高いからといって) 変に大人にさせるのではなく、子ども時代を楽しむべきだと今瀬先生は仰っています。

ギフティッドという非同期の成長のある子ども達だからこそ、自分を知るチャレンジを沢山する事で、とても複雑な自分を知ること、自分を受け入れることで、自信と自尊心を身に付ける事ができるのだそうです。単に得意なことをしている、また、上手なことをしていること経験からは自信や自尊心は身につかないそうです。

ギフティッドの子ども達は、正義感の強い子どもも多く、報道を見て心を悩ませる場合もありますが、その姿は得意な分野での現れであり、自分を知るチャレンジには繋がらないそうです。

学びその4: AWAKENING EXCELLENCE - 自分の素晴らしさや魅力を知ることの大切さ

ギフティッドの子ども達の中には、自尊心を傷つけたくないという怖れから、自らの快適ゾーンから出て「知らないので手伝って」と助けを求めることは難しい子どもが多いそうです。一方、ギフティッドの子ども達は、正義感の強い子どもも多く、テレビなどで、

世界で起きている報道ニュースなどを見て、自分に何ができるかなど悩む場合、また、何もできない自分を責める場合もあります。その正義感や公平性などは、時に、権力に逆らう姿に学校現場ではうつる場合がありますが、こういった正義感は彼らにとって人生を歩む意味や意義になりえる特徴なのだそうです。

この様に、ユニークな視点や気づきがあるが故に理解してもらえないのではないかという不安や、弱みを見せたくないという思いを抱えながら成長するギフティッドの子ども達が、自分の魅力を引き出す為に自己開示し、他者に助けを求めるというのは人一倍難しいことなのだなと思います。

残念ながら現在の日本の科目別の教育では、自分のことについて深く知るチャンスが無く、自分を成長させるために助けを求めるセルフアドボカシー(Self Advocacy) 力を身に付ける機会が少ないため、ギフティッドの子どもたちがセルフアドボカシーを通じてまだ見ぬ自分の魅力に出会えるチャンスが少ないそうです。

予算、先生やコミュニティが整うことで、ギフティッドの子ども達が自分自身の魅力を引き出していける事が目標であり、それは得意を伸ばすという事ではなく、「成長の余地」がある領域で、未知なる自分と出会うこと。(Room for growth の領域をみつけることです)。そのためにはしっかりと子どもとしての成長の機会を持つ事が大切なのだと腹落ちしました。

学びその5:自分の気持ちに圧倒されないために大切なのはチャレンジ

ギフティッドの子ども達は得意でないと思うことには積極的に取り組めない傾向があるそうです。なので、知らないことを自分が認め、自分の気持ちに圧倒されない様に成長していく事が大切なのだそうです。なので、自分の気持ちにスマートになっていく感情知性を育めば、ミッションが見つかった時に圧倒的なエネルギーに変えることもできます。

ここまで書いてみて、カンファレンスの紹介に書かれていたエモーショナルインテリジェンスの大切さが自分なりに整理されてきました。

今瀬先生曰く、日本のギフティッド教育は米国と比べると50年くらい遅れているそうです。学校ではまだまだ受け入れられていないコンセプトですが、日本はホームスクーラーには良い環境ですし、ギフテッドの子ども達への教育を止めない事がとても大切です。

子ども達が感情知性を磨き、自分の魅力を引き出せる力を育める様に成長することを大人がサポートする。ギフティッドであるかどうかに関わらず、思春期の子どもをもつ1保護者としても考えて行動したいテーマですね。

最後に、基調講演からの学びを表すとても素晴らしい格言が、今瀬先生により2日目の朝に紹介されました。全ての人に当てはまる幸せな人生を歩むための教えです。

関連サイト

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