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年末年始から始めたい!「学び」を考える40冊 part 1:保護者や教育者としてのあり方を考える(2022-2023年版)

いよいよ今年も残るところ数日となりましたね。2022年の漢字は「戦」と発表されましたが、変化が激しいことがニューノーマルな時代となったいまこそ、目の前の処方箋に頼るのではなく、人が育つとは、学ぶとは、といった本質に立ち返りながら未来を希望的に展望することが、子育てや子どもたちの成長を支えるために必要な大人の学びだと FutureEdu では考えています。

今回は「大人が学べば子どもも学ぶ」、「大人が変われば子どもも変わる」、という考え方をもとに、幼稚園児から高校生のお子さんに日々向き合われている保護者や教育者の皆様にお勧めしたい本を、4回にわたる特集として紹介します。選者は多彩な方面でイキイキと学び続け、挑戦を続けていらっしゃる方々です。多様性が生み出すこの幅広いセレクション。お気に入りの一冊が見つかること間違いなしです!

Part 1: 保護者や教育者としてのあり方を考える (12/26)

Part 2: 多面的にこれからの「学び」のあり方を考える (12/27)

Part 3: 「深い学び」を楽しむ人になる (12/28)

Part 4: 子ども部屋に置いておきたい、親子で読みたい (12/29)

大人のアンラーニング (unlearning) につながる一冊

それしかないわけないでしょう(MOEのえほん)

著者:ヨシタケシンスケ

大型本: 32ページ

出版社: 白泉社 (2018/11/2)

推薦者:匿名

おすすめポイント:「それしかないわけないのだ」

編集部から: VUCAの時代というと暗くなる話題が多いですが、考え方次第で楽しい未来は描けると感じられる一冊。親子で楽しめます。


THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す

アダム・グラント (著)、楠木 健 (監修・翻訳)

単行本: 424ページ

出版社: 三笠書房 (2022/4/18)

推薦者:篠田 真貴子、エール株式会社取締役

おすすめポイント:「信頼され成功するには、これまでは学んだ知識を活かし決めたことをやり抜く一貫性が大事とされてきましたが、それに対し本書では、自分の考えや感情を「一度手放す」「もう一度考える」という柔軟性の方が大事だ、と説く本です。著者は世界トップの組織心理学者で、エピソードやエビデンスが豊富なのも読みどころです。」

こんな人に読んでほしい:「知的好奇心がある方なら、どなたでも!」

編集部から: いつも唸る一冊を発信されている篠田さんの選ばれた一冊は、全米トップビジネススクール、ウォートンスクールの人気教授のアダム・グラント氏による最新作。グラント教授のインスタグラムも毎日参考になるメッセージが発信されています。英語の練習にフォローしてみてはいかがですか?


子どもとの向き合い方を見つめ直す一冊

教室マルトリートメント

著者:川上 康則

単行本: 308ページ

出版社: 東洋館出版社 (2022/4/28)

推薦者:ピロティ

おすすめポイント:「教師が子供をコントロールするために、不適切な言動や態度で子供を傷つけてしまっていることに気づかされる一冊。画一的・効率的に進めてきた教育現場で、令和の時代になったからこそ表面化してきたもの。すべての教師が子供を傷つけない、伴走者としての教師になるための指針となる本です。」

こんな人に読んでほしい:「成功体験を積んでいる先生。学力を向上させていると評判の先生。」

編集部から:東京都矢口特別支援学校の主任教諭の矢口先生による一冊。長年のご経験に基づく具体的なアドバイスが詰まった一冊は、保護者の視点でも参考になる情報が詰まっています。

参考記事:「教室マルトリートメント」を防ぐために教師を追い詰めない組織づくりを (みんなの教育技術)


親業―子どもの考える力をのばす親子関係のつくり方

トマス ゴードン (著), Thomas Gordon (原著), 近藤 千恵 (翻訳)

単行本:296ページ (1998/11/1)

出版社:大和書房

推薦者:蓑田 雅之、一般社団法人楽習楽歴代表理事 ・一般財団法人東京サドベリースクール評議員

おすすめポイント:「 1960年代にアメリカで、トマス・ゴードン博士が始めた「親業訓練講座」について、博士自らが書かれた本です。子育てを親の職業と捉え、学んでいくという考えに基づいています。子どもに対する親としてのスタンスや距離感、対等関係などが学べる一冊です。 」

こんな人に読んでほしい:「 親子の疎遠や、子のひどい反抗に悩んでいる人。不登校になって家にいる子どもとどう接していいか分からない親御さんなどに読んでいただきたいと思います。 」

編集部から:不登校児を持つご家庭を支援するおはなしワクチンを主宰する蓑田さんが選ばれた本書の著者のトーマスゴードン博士は、60周年を今年迎えられた研修団体を運営されています。本質的な親としてのあり方を知ることのできる一冊です。

蓑田氏著書:『もう不登校で悩まない! おはなしワクチン』(2020/8/31)


どの子も違う-才能を伸ばす子育て 潰す子育て

著者:中邑 賢龍

新書:224ページ (2021/6/8)

出版社: 中央公論新社

推薦者:高田 理尋、私立高専職員

おすすめポイント:「 「異才発掘プロジェクトROCKET」のプロジェクトリーダーの先生の著書。「通常の学級に在籍する小中学生の8.8%に学習や行動に困難のある発達障害の可能性」という現代社会。「誰一人取り残さない」SDGs社会の実現に向けても教育現場、社会全体で真剣に考えていかなければいけないと思います。 」

こんな人に読んでほしい:「 教育に携わる方だけでなく全ての保護者にオススメします。特に印象に残ったフレーズは、最後のほうにあった、「人が人らしく生きていく。そのためにはどうすればいいのか。まず、それを考えながら、子どもの個性を伸ばし、人が人らしく、お互いを尊重して学び・暮らし・働ける未来を親や教師が思い描きながら、子育て・教育を行っていきましょう。 不安定な未来が待ち受ける以上、私たちは、個々の特性に合わせて子どもたちが自由に学べる環境を作り、他者をおもいやることのできるような人材教育を行うことが一番です。今こそ、親馬鹿の壁を超えていけ。」」

編集部から:「異才発掘プロジェクトROCKET」は、甘やかすことなく、参加者が様々なチャレンジに取り組みながら、発達に凸凹があるという難しさを乗り越えて自分らしく学び方を見つけ、やりたい事を見つけていくことを支援する取り組みです。本プロジェクトは終了しておりますが、現在はLearnというプロジェクトで、子どもたちが個性を発揮できる学びの場を運営されていらっしゃいます。「目的なし」「教科書なし」「時間割なし」「協働なし」という伝統的な学校教育とは真逆の、緩やかな学びの場が向いているお子さんは公式サイトもご覧ください。


The Book You Wish Your Parents Had Read (and Your Children Will Be Glad That You Did) (洋書)

孤独と共感 脳科学で知る心の世界 (別冊日経サイエンス230)

著者:Philippa Perry

Kindle版: 240ページ

出版社: Penguing (2019/3/17)

推薦者:Rie fu 、シンガーソングライター

おすすめポイント:「 自分の両親に読んでもらいたかった本(そしてあなたの子どもは親がこの本を読んでくれてよかったと思うはず)というスレートなタイトルの子育て本。著者は心理療法士のフィリッパ・ペリーで、夫は女装系現代アーティスト、グレイソン・ペリーというユニークななファミリー。  本書は子どもも大人も学べる「コミュニケーション」本。心理士ならではの視点から、「感情や気持ちを伝える」ことの大切さを説いている。目からウロコだったのは、そのためには、まずは子に親自身の気持ちをうまく伝えるべきだということ。例えば夕飯の時間に子が帰りたがらず、外で遊びたがっているときは、「夕飯の時間だから帰ろう」ではなく、「ママ/パパはお腹が空いて少しイライラしてきたから、帰ってご飯を食べたいな?」と言うこと。大人でもイライラしたり悲しくなることもあり、それを伝えてもいいとお手本を見せることで、自分の感情をうまくコントロールして、相手の気持ちをよく把握できる子に育つという。 親子に限らず、どんな対人関係でも最も大切な「対話」について、微笑ましいエピソードと共に、分かりやすく説明してくれる一冊だった。 個人的には、トランスレーターとして今一番翻訳したい一冊! 」

編集部から:イギリスの心理療法士のペリー氏による長年の経験に基づいた一冊。自分の気持ちを親も伝えるというのは「私メッセージ (“I”Messages) 」という親業にも言及されている、良好な関係を生むためのコミュニケーション技術です。(例:「話聞いてないでしょ」ではなく「聞いてもらってないように思うんだけど、ちょっと話せる?」) イギリスのSunday Times のベストセラーの本書を無料で聴ける最初の2章はこちらから。5X15 イベントの15分動画はこちらから。


わが子がギフティッドかもしれないと思ったら: 問題解決と飛躍のための実践的ガイド

ジェームス・T・ウェブ (著), ジャネット・L・ゴア (著), エドワード・R・アメンド (著), アーリーン・R・デヴリーズ (著), 角谷 詩織 (翻訳)

単行本(ソフトカバー): 528ページ

出版社: 春秋社 (2019/12/24)

推薦者:井上真祈子、一般社団法人ダイアローグ・ラーニング

おすすめポイント:「 ギフティッドという名称は、日本ではなかなか受け入れられず、多くの批判的な言葉がなげかけられました。また、これといった基準がないこともあり、ギフティッド教育界隈は玉石混淆の状況にあります。文科省は、2023年度から学校での支援を開始すると決定しました。しかしまだ具体的で緻密な提案がなされているわけではありません。ギフティッドのお子さまの保護者の方から、学校で教員やクラスメイトからの差別を受けたり、家庭内での適切な関わり方がわからないなど、辛い胸の内と共にご相談を受けることが増えました。その際に、保護者の方へ「この一冊を読んでください」と紹介し続けている一冊です。ギフティッドの認知は、単に「違い」を超えた別の世界にあります。ぜひ教員の皆様にもお手に取っていただき、彼らを理解いただけましたら幸いです。」

こんな人に読んでほしい:「 個性豊かで創造性にあふれたお子さまの保護者さま、教育関係者」

編集部から:子ども時代からのリベラルアーツ教育、Co-musubi を学外で実施されている井上さんは、常に子ども一人一人の尊厳を認めた接し方をされていらっしゃいます。子ども一人一人の個性や多様性を認めたくても大人としての原体験がない場合には理解に苦しむものです。本書は、個性にあふれた我が子や生徒さんへの理解を深めたいと願う保護者や先生方におすすめの一冊です。

井上さんのFutureEdu での連載記事はこちらから

企画編集:竹村 詠美


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