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イベントレポート 「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」出版記念イベント

モンテッソーリ教育の小学校の教材を紹介する吉川さん

4月8日、FutureEdu Tokyoが主催する、「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」の出版記念イベントがMistletoe株式会社にて開催されました。イベントにはモンテソーリ教育やオルタナティブ教育に関心の高い約50名の方々が参加され、盛況に終わりました。

このイベントでは、著者である、堀田はるな先生からモンテッソーリ教育の概要や、モンテッソーリ教育を受けた子供達はどのような大人に成長するのか、園の環境や園に通わせることができない方がどのように自宅で取り入れたら良いかなどについてお伺いしました。続いて、モンテッソーリの小学校や中学校での様子について、モンテッソーリ教育に親御さんとして10年以上関わられてきたFutureEdu Tokyo の吉川まりえさんからお伺いしました。さらに、パネルディスカッションやQ&Aセッション、小グループでの学びのシェア、その後のランチ会など熱量が高いままに会は進み、参加された皆さんのモンテッソーリ教育やオルタナティブ教育に対する関心の高さを感じるイベントとなりました。

前半の堀田先生と吉川さんのプレゼンは概要を、トークセッションやQ&Aはとても興味深い質問が多くあり、イベントレポートではその様子をお伝えできればと思っています。モンテッソーリ・メソッドのより具体的な内容については堀田先生の著書、「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」を是非お読みください。

 

モンテッソーリ・メソッド

堀田 はるな先生のトーク

イベントの冒頭では、著者の堀田先生より、モンテッソーリ教育の概要、そして原宿子供の家での様子について、教師、教具、縦割りクラス、自由時間、5領域のプログラムの観点からお話いただきました。モンテッソーリの考え方としては、基本的に子どもが主役であり、大人の役割としては、何を教えることではなく、子どもが何かをしたいときに手を貸してあげるという姿勢が大切というお話がありました。

堀田先生のお話の中で、「モンテッソーリ教育を受けた子どもはどのように育つのか?」という点と「家庭での取り組み」についてご紹介したいと思います。

モンテッソーリ教育を受けた子どもはどのように育つのようす?という点についての具体的な内容ですが、

・  多様性を受け入れる
・  柔軟な発想ができる
・  問題解決能力が育っている
・  穏やかで優しい

と言った特徴が挙げられていました。例えば多様性は、異年齢で構成される縦割りクラス形式が取られているので、上の子どもが小さい子どもに教えてあげたり、年齢が異なってもそれぞれ得意なことがある事を認め合ったりなど他人の自由を尊重し、受け入れるといった多様性が日々の活動を通じて、育っていくと言われています。

また、家庭でできる主体性を育てる関わり方として、堀田先生からご紹介いただきました。ベースとなる考え方は、「子どもができる事は(子どもが)自分ですべきこと」との事です。子どもが自分でできる事を自分でするとは具体的にどのような事かというと、例えば、靴を履く、服を脱ぎ着する、ハンガーにかける、食器を下げる、荷物を持つなどで、このような活動を通じて、子どもは手や指などの器官を沢山使い、その結果子どもは発達を遂げていくことができるそうです。

大人の役割としては、子どもが自分できる事は子どもにやってもらい、求められた時にだけ手伝うようにすれば良いとのことでした。こう聞くと、「なるほど、それであればできている」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、さらに堀田先生から大人がついついしてしまう行動として、子供よりも先んじてやってしまい子どものコミュニケーションの機会を奪ってしまう、必要以上に世話を焼きすぎたり、時間の余裕がなくて大人が子どもがやるべき事を代わりにやってあげてしまったりなどが多くある事も指摘されていました。

また、子どもが初めて何かに取り組む時にはそのやり方を、子どもが理解できるスピードでゆっくりと見せてあげる事、そしてその際には言葉と動作を同時に行わない事、一度子どもがやり始めたら、口を出さず、見守る事が重要だというお話がありました。

 

モンテッソーリ、小学校以降での学び

吉川 まりえさんによるトーク

堀田先生のお話に続き、FutureEdu Tokyoの吉川まりえさんより、小学校や中学校でのモンテッソーリ教育について紹介がありました。吉川さんは、現在15歳のお子さんがいらっしゃり、お子さんを1歳半からモンテッソーリ幼稚園、小学校、中学校に通わせていらっしゃいます。

日本でのベーシックな教育を受けられている方はこれらを聞いたら驚かれるかもしれませんが、モンテッソーリの小学校には、「時間割、教科書、先生が教壇に立ち教えるという授業スタイル、ランドセル」などがないそうです。子ども達は何をいつやるかを自分で決めることができます。こう聞くと、自分の好きなことばかりでは偏るのではないか?という疑問も湧きますが、吉川さんのお話によると、お子さんは他のクラスメイトが取り組んでいる事を見て、「私もやってみよう!」と思い、自然と興味と活動の幅が広がっていくそうです。ちなみに、小学校でもクラスは縦割りクラスとなっています。子ども達の活動は、ノートに何をやったかが記録されているので、保護者は子ども達がどのような事を学んでいるか把握することはできるとの事でした。

モンテッソーリ教育では、大きな絵(方向性)を見せながらも、実際に何を学ぶかについては子ども達に任せています。特に、宇宙観を大切にしており、宇宙の始まりについて知り、地球について知り、地球に生まれた生命について知り、地球の長い歴史の後半に登場する人間について知り、そして人間が持つ文化や言語などについて学んでいくそうです。吉川さんのお子さんが通われている学校では、毎年初年度に宇宙論についての授業があり、ただの座学ではなく、先生が説明とともに引力やビッグバンの様子がわかるように実験をしながら学びを深めていく仕掛けがされています。

さらに、お子さんが取り組まれていた学びの内容について具体的に教具なども交えてご紹介がありました。モンテッソーリ教育は、小学校低学年ではハンズオンで学び、その後成長に応じて抽象的概念に進んでいくというスタイルを取っているそうで、実際に手を動かして体感することや、数字の概念を視覚で捉えるところなどもただ九九を暗記するような日本の教育と異なります。モンテッソーリの教具は、教えるのではなく、子どもが発見する仕掛け、体型的に考え、応用できる仕組みが考えられていることがよく分かりました。

吉川さんが紹介されていた活動を拝見した私の印象ですが、モンテッソーリ教育では、いわゆるフレームワークとなるものが豊富に提供されており、子ども達が自ら学び考える土台が教具やテーマを通じて自然とかつ体系的にそして発達段階に応じて用意されている所がとても興味深く感じました。

パネルディスカッション

堀田先生、吉川さんのプレゼンに続いてパネルディスカッションが開催されました。Future Edu Tokyo共同創業者の竹村さんがモデレーターとなり、堀田先生、吉川さんと事前に参加者の方からいただいた質問を踏まえてのパネルディスカッションが実施されました。内容のダイジェストについて、いくつかご紹介したいと思います。

竹村:モンテッソーリ教育はイノベーション教育としても昨今注目されていますが、そもそも誰にでも合うものなのかどうか?という質問が多くありますが、どう思われますか?

堀田先生:元々、モンテッソーリ教育は、子ども一人ひとりの観察を通じて始まったものなので、理論上は合わない子はいないのではないかと思います。ただ、集団ではなく個別で活動する分、教師の力量が試されるところもありますので、各園の先生の考え方などがお子さんの気持ちにあうかどうかを見られると良いかもしれません。モンテッソーリの園にただ預ければ何かを得られるのではなく、家庭の環境や協力も大切になりますので、家庭もモンテッソーリにおいて重要な環境の一つであるということを受け入れられるかどうかもポイントになると思います。

吉川さん:小学生以降ある程度大きくなってから移った場合、(日本の教育で育つと)教えられたり指示されたりに慣れすぎていて、自由すぎて何をして良いか戸惑うことはあるかもしれません。

竹村:家庭でできる事について、堀田先生からお話もありましたが、親の子どもへの接し方やマインドセットについて何かアドバイスがありましたらお願いします。

堀田先生:みなさんお忙しいので難しいこともあるかもしれませんが、日々の生活で子どもを待つ、子どものペースでという事を心がけていただけたらと思います。子どもは自分で自分を成長させるペースがあり、大人と子どものペースは違うとわかった上で対応してみてください。そのペースの違いにイライラしてしまうこともあるかと思いますが、子どものできるところ、良いところを集中して見てあげて欲しいと思います。子どもは生まれてきてくれたことだけでも奇跡なのです。親が子どもの良いところを見ようとすると、子どもが自信を持てるようになりますし、是非言葉に出して褒めてあげてください。

吉川さん:時間をあげる、ということしか親はできないと思います。最初から何にどれくらい時間がかかりそうかなど心づもりをしておけば、対応もできますし。また、子どものサイズにあった使いやすいものを揃えておく事も大切かなと思います。

竹村:最近、自分の好きなもの、何がやりたいかわからないという子どもが増えていると聞きます。何か家庭でできるサポートがあれば教えてください。

堀田:前提として子供の時間をあまり奪わない、時間を詰め込まないという事があるかと思います。子どもの自由な時間が少なくなる事で、自然と成長する段階で興味があるものを見つけられる時間が少なくなっているように思います。大人が良かれと思っていることでも、子どもが本当に求めているものと一致しない事もあるのではないでしょうか。何よりも子どもの時間を奪わない。子どもが何に興味を持っているのかをよくよく見て見るところから始めてみてはどうでしょうか。

吉川:正直なところ、小学校の勉強は本気になればすぐキャッチアップできる内容だと思います。なので、勉強よりも子供に自由な時間を与える事ではないでしょうか。周りの親御さんを見ていると揺らぐところもありますが、親側も自分の軸が大切になると思います。

竹村:モンテッソーリ教育ではテストや評価がありませんが、点数で評価されない環境というのは実際どのような感じなのでしょうか?

吉川:点数だけだと、そのテストを受けた一過性の点数で決められてしまいます。例えば、テストで60点でも、その後に勉強をして100点が取れるようになったかもしれないですが、学校のテストはやったらやりっぱなしで、その後のキャッチアップまで行き着かないのが現状です。ちなみに、モンテッソーリの学校ではテストはないのですが、結果的にテストの点が一般的に高いと言われています。

竹村:親側もよく100点を取ったら何かを買ってあげるなど外発的な動機で働きかけて、良い点数を取る事にフォーカスしてしまう事があるかと思いますが、そういった事へのリスクなどは感じられますか?

堀田:自分自身が子どもの頃、学校で先生が教えてくれることは実生活でどのくらい役に立つことなのか?と疑問を思いながらも100点を取らなくてはいけないというマインドセットだったと思います。しかし、今、原宿子供の家の子ども達を見ていると、自分で自分のやりたいことを選んで、知りたいことを深めているので、学びは身につきますし、学んだことを活用してお家や外遊びを楽しむなど、考え方が身についています。新しい疑問があっても楽しめ、自分の興味のあることに夢中になれて、とても人生が輝いているのではないかと思います。

竹村:まさに主体的に生きる子どもが育っている印象ですね。

 

Q&Aセッション

トークセッションに続き、会場からのQ&Aタイムに移りました。会場からも沢山の質問が出ていましたが、ここでいくつか取り上げたいと思います。

「子どもがモンテッソーリの学校に通っており、個別学習が多いことはわかったのですが、何か共同で活動する時間もあるのでしょうか?」

吉川:小学校だと、年に1回ミュージカルなどをやったり、中学生になるとグループラーニングの機会が増えたりします。ただ、やりたくなったらやらなくて良いなど参加するかしないかの選択を子ども達ができるようになっています。

竹村:息子がモンテッソーリのスクールに通っており、音楽が好きで高学年でバンドを作ってコンサートをするなどグループで活動をする提案などをして実施しているケースもあります。

「モンテッソーリ教育は高等教育になるにつれて選択肢が少ないように感じるがどうなのでしょうか?」

堀田:日本では、義務教育の枠組みで難しいところがあるが、少しでもモンテッソーリのメソッドを広められるような機会を増やして行きたいと考えています。

吉川:オルタナティブ教育はアメリカの場合では、ここ3-5年でかなり増えてきていて、この先中国をはじめ世界的にもさらに増えていく事が予想されています。

「生徒間の喧嘩やトラブルがあった場合に、モンテッソーリ・メソッドではどのようにアプローチしていますか?」

堀田:基本は見守る、という姿勢になります。必要がある場合のみには教師がお互いの言い分を聞き、考えることを促します。決して頭ごなしに怒るなどはしません。

吉川:娘から聞いた話ですが、小学校以降になると、教室の中に「ピース(平和)テーブル」というのがあり、喧嘩をすると先生がその席に誘導します。このピーステーブルの中央には石が置いてあり、その意思を持った子が話せるというルールになっています。つまり、途中で言い分があっても話に割り込んだりすることはできません。そこで冷静になってお互いの言い分を順番に言って仲直りをするそうです。

 

その後はシェアリングタイムとなり、各グループ3-4人程度で自己紹介とともに、イベントの感想や考えなどをシェアいただきました。その後のランチタイムに至るまで終始会場では参加者の皆さんの話は尽きず、新しい時代に向けての教育のあり方について前向きに考えて行動されていらっしゃる方がいかに多いかを実感するイベントとなりました。

FutureEdu  Tokyoでは今後もこのようなイベントを開催してまいりますので、是非ご参加ください。

Written by 島田敦子