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[Bard Academy and Bard college at Simon's Rock イベントレポート]いつから大学に行く?

本日は、3月5日に外苑前の Mistletoe 株式会社にて開催したBard Academy and Bard College at Simon's Rock という早期大学に関するセミナーの様子をお伝えします。

当日は、学校のことを知らない方が大半でしたので、学校説明はまず、Bard College at Simon's Rockの歴史から始まりました。全寮制女子高の Concord Academyの校長をしていたElizabeth Blodgett Hall が1966年に"Simon's Rock"という学校を作り、1976年にニューヨーク州にあるBard Collegeと合併しました。 Bard College at Simon's Rockは今も通称"Simon's Rock"と呼ばれています。Elizabeth Hallは、高校でも大学でもないこの学校を敢えて単に"Simon's Rock"と名付けたと言われています。

高校の校長だったElizabeth Hallは、高校4年間(米国の高校は9年生から12年生までの4年制で、日本の中3~高3に相当する)の最後の2年間のほとんどが大学受験準備に費やされていることを問題に思っていました。また、高校生の一部には大学入学年齢の18歳まで待たずとも知性の面でも社会性の面でも、大学に進学できるほどに発達している生徒がいることにも気が付いていました。

Simon's Rockは、進学のための勉強ではなく、学問をしたいという学習意欲が強い子供たちを対象とした11年生(16歳・日本の高2相当)から大学課程に進める4年制大学です。米国には飛び級制度があるので若年で大学に入学したり、また最近では未成年(米国では18歳未満)を対象とした特別なコースがある大学が増えたりしていますが、どちらの場合も最終的には主に18歳以上の学生を対象としたキャンパスに合流することになります。Simon's Rockでは高校11年生、12年生(日本の高2、高3)が大学1,2年次過程に入学し、大学3年次からの編入は受け入れていないので高校生のための大学と言えます。1学年は100名、全校で400名の小さな大学です。教授と生徒の比率は1:7で、最大でも15名という小さなクラスで授業を受けます。大学生と言えども未成年でもあるので少人数で手厚い指導をしているそうです。年齢は若いですが、一般の大学生のように週にいくつかの授業に出席したら残りの時間は自分で管理します。Simon's Rockの2年次を終了するとAsociate of Arts(準学士・短大卒相当)の資格がもらえます。AAがあれば今後の進学に高校の卒業証書は必要がないのでSimon's Rockでは高校卒業資格は出ません。ほとんどの生徒はそのままSimon's Rockの3年次、4年次に進学し学士号を取得します。Simon's Rock に専攻がない建築科のような分野に興味がある学生は他大学の専門課程に編入し、そこで学士号を取得します。全学生の約1/4が他大学へ転校するそうです。学部によっては他大学との提携もあり、工学部の場合、Simon's Rockで3年間工学の基礎を学び、その後コロンビア大学やダートマス大学の工学部3年次へ無試験で内部進学できるという裏技もあります。コロンビア大学またはダートマス大学の工学部を2年間かけて卒業するとSimon's Rockの文学士とコロンビア大学またはダートマス大学の理学士の学位を同時に取得できます。日本では内部進学が出来る大学附属高校は珍しくありませんが、米国でこのようなGuranteed Admissionは大変珍しいことで筆者は他に聞いたことがありません。Simon's Rockでの教育の質が高く評価されてのことです。若くして大学を卒業した学生の多くがそのまま大学院へ進学するのでSimon's Rockの卒業生の博士号の取得率は全米の大学の中でも常にトップクラスです。

Simon's Rockは学問意欲旺盛な11年生、12年生(高校2,3年生)に選ばれる大学として続いてきましたが、大学受験準備に追い込まれる前の9年生、10年生(中3、高1相当)でも既に高校のカリキュラムに満足していない生徒がいることや、高校での授業がその後の大学での研究につながっていないことに対して、2015年にSimon's Rockの敷地内に2年制の附属高校、Bard Academy at Simon's Rockが併設されました。11年生、12年生(高2・高3)を特別な専門カリキュラムで過ごす2年制高校はありますが、9年生、10年生(中3・高1)を対象とした2年制高校は現在のところBard Academyだけです。1学年40名。どの科目もSimon's Rockの教授が大学まで続くカリキュラムを考えて教えます。大学の雰囲気を感じながら、同じ設備・施設を使って学習できます。Bard Academyの生徒はまだ大人の管理下で、通常の高校生のように日中は学校へ行き、放課後は自由に過ごし、学習時間の後は決まった時間に消灯と規則正しい学生生活を送ります。学習アドバイザーとの面談が週に2回(大学生は週1)もあります。2年間の高校生活が終わると無試験でSimon's Rockへ進学できます。Bard Academyに2年間通っても高校卒業資格は出ないので注意が必要です。Bard Academyで2年間過ごしたらSimon's Rock以外の大学へ進学資格ができるわけではありません。単位互換で普通の高校へ戻ったり、飛び級で一般の大学へ進学出来る可能性はあります。

Bard Academyは入学したら高校の授業を2年間で教えてくれる学校ではなく、高校を2年間で終えて早く大学に行きたいという学問好きな子が行く学校という印象を受けました。週末もボストンやニューヨークへ遊びに行くよりもキャンパスで思い思いに過ごしている子が多いとのことです。入学選考に当たっては、学力だけでなく大学生に相応しい社会性が備わっていてキャンパスライフに馴染めるかも観点となるそうです。子供がどこの大学で何を学ぶか?は気にしても、いつ大学に行くかを考える人はほとんどいません。多くの人は18歳で大学に行きますが、20代半ばやもっと後になつて大学に行く人もいます。Simon's Rockは16歳で大学に行く準備が出来ている子どものための大学...という位置づけだそうです。一部能力が突出していても社会性が未熟な生徒への訓練が配慮されているギフテッドやタレンテッド・スクールとはやや異なるそうです。Bard AcademyからSimon's Rockに進学しなかった生徒は2015年からの累計で2名、Simon's Rockの100名の新入生のうち1~5名程度が1学期が終わるのを待たず、入学後1-2ヶ月で学力不振で自主退学するそうです。

現時点ではBard AcademyもSimon's Rockも日本人学生はいないそうです。米国育ちの日本人が在籍したことはあるそうですが日本育ちはまだとのこと。Sohpieは今後アジア各国を回る予定だそうですが、生徒がいない日本はなかなか来づらいそうです。日本の次に向かう中国では朝から晩まで全て出願者との面接がぎっしり入っていて観光はおろか食事の時間もないのに、それでも全員は面接できず帰国後Skype Interviewをするそうです。今回皆さまと有意義なイベント開催できてとてもうれしく思っていますが、中国との違いを考えさせられてしまいました。

近年、中高一貫校の躍進が目覚ましい一方で、大学付属校は内部進学率も下がりパッとしない印象ですが、Bard Academyのような取り組みは大学受験だけは別物という米国でよりも、すでに付属校が沢山ある日本のほうが取り入れやすいのではないかと思います。大学付属校は設備と環境が整った学校が多いのでぜひ新しいことにチャレンジしてもらたいものです。留学をしない子どもたちにも同じチャンスがあるように、日本の学校もどんどん進化・変化して欲しいです。

公式サイト(英語となります):

Written by 吉川まりえ