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「白馬インターナショナルスクール(HIS)の魅力とは?②」- 立ち上げストーリーと魅力的な先生たち-

1回目の白馬インターナショナルスクール(HIS)の取材記事の続編です。1回目の記事はこちらからご覧ください。

1)HISの立ち上げはいつ頃から取り組まれたのでしょうか?

編集部:本日はありがとうございます。私(島田)が初めて草本さんにお会いしたのが、2019年の FutureEdu のイベントでした。「白馬にインターナショナルスクールを創設する予定です!」と自己紹介されていたのを今でも鮮明に覚えております。創設されたいという時点から、どのように実現に至りましたか?

草本さん:最初に白馬にインターナショナルスクールを創設することを考えついて相談したのが元ヤフーCEOで現在東京都副知事を務めておられる宮坂学さんです。「おお〜良いですね!やりましょう。手伝いますよ。」とおっしゃっていただき、実際に、UWC ISAKの小林りんさんや岡田武史さん他、数え切れないほど多くの人にご紹介いただいて、今も折に触れいろいろな形でサポートしてくださっています。

 宮坂さんにご紹介いただいた太田直樹さんが2017年の終わり頃に FutureEdu 代表理事の竹村詠美さん(一般社団法人 Learn by Creation 代表理事、一般社団法人 FutureEdu 代表理事)に繋いでくださいました。竹村さんのご協力を経て、HIS理事の堀井先生をはじめ多くの熱い教育関係者にお会いすることができ、米国ミネルバ大生のインターン受け入れを始めたり、米国ミレニアムスクール校長クリス・バーム先生に会うきっかけをいただいたりしました。

 私自身、東京から移住し、14年ほど住み続けている地元白馬では、白馬村の前村長や役場職員の方々にも応援していただき、HISをふるさと納税の対象事業者に認定していただきました。現村長の丸山俊郎さんは、HIS設立準備財団の創設時から理事を務めていただき、村長選に出る際に辞任されるまでご尽力いただきました。今ももちろん応援してくださっています。2016年から始めたサマープログラムには数々の講師の方々にお越しいただき、それがきっかけで今教員として参画している人も2名おります。

編集部:HISは2016年からのサマースクールからスタートされたとのことですが、サマースクールプログラムはどのように実施されていらっしゃいましたか?

草本さん:サマースクールは最初は1週間のプログラムで、英語にはこだわっておらず、日本語で実施していました。サスティナビリティのエッセンスは2018年頃から取り入れましたが、当時は参加してくれる生徒さん達が「自分とは何者なのか」といった視点や、自身の強みや個性などに気づける機会を提供したいと思っていました。

 講師をしてくださる方にお声がけするところから始め、アート、音楽、コーディングなどをテーマに専門家の方をお呼びし、企画していきました。講師としては、多方面に世界でも活躍され、また自分自身が是非お誘いしたいという方にお声がけしました。世界に名だたる有名デザイナー事務所にて活躍されていたデザイナーの方や、東大先端研のプログラマーの方などをお呼びすることができました。実はサマースクールの金額よりも大幅に自ら持ち出しをして実行をしていました。

 サマースクールを実施していく中で、幸いリピートしてくださる生徒さんがいらしたり、参画して下さった先生方がサマープログラムにとても賛同くださりコアメンバーとなって下さったり、またミネルバ大学の学生さんがサポートメンバーで入ってくれたりと、サマースクールを毎年進化させていくことができました。

 また、数年に及ぶサマースクールを通じて学んだ一番大きなことは、「子どもの学ぶ力を信じれば、子どもは大人の予想を軽々と超えてくる」という点です。サマースクールに参画する生徒さんを見ていると、もっとこうしたらアウトプットが良くなるのでは?とついアドバイスをしてみたいと思うこともありましたが、講師になってくださる先生方から、子どもを信じ、学ぶ力を実際の経験を通じて私自身が学ぶことができました。

編集部:本日タウンホールミーティング(生徒、先生達が学校生活・日常生活について改善したいと思った事を提案し全員でディスカッションできる場)を拝見させていただき、生徒さん達の主体性を大切にされ、生徒さんたちの主体性を大切にされる先生方の「待つ姿勢」が素晴らしいなと実は思っていたのですが、サマースクールでのお話を聞いてその背景がよく理解できました。

2)元ミレニアムスクール校長のクリス先生、事務局長の堀井さん、生徒達と日々接するガイドと呼ばれる先生方について教えてください。

編集部:HISでは校長先生が元米国ミレニアムスクールのクリス・バーム先生でいらっしゃいます。世界中からクリス先生には様々なオファーがあったかと思うのですが、今回どのような経緯で出会われ、校長先生になられたのでしょうか?

草本さん:様々な先進的な学校をリサーチする中で、ミレニアムスクールは是非訪問したい学校の一つでした。2018年4月に大学院の同窓会でサンフランシスコに行くことになり、こちらのFutureEdu Tokyo代表の竹村詠美さんにお願いしてクリス先生を紹介していただきました。それが初めての出会いで、ミレニアムスクールの素晴らしさに感銘を受けました。2019年8月にクリス先生が来日して教育者向けのワークショップを開催した際に、竹村さんにお声がけいただき、通訳として参加させていただきました。ここでもクリス先生の教育者としての素晴らしさ、人としての徳の高さを感じてさらに感動し、2020年4月からHISの教員向けに定期的に教員研修を始めてもらいました。その間、校長候補は別にいて話を進めていたのですが、本当に革新的な学校を創るのにこの人で良いのかな、という疑問が実のところありました。一方、クリス先生に教員研修をしてもらう中で、この人は間違いない、という想いが強まりました。白馬への移住が難しいことは分かっていましたが、コロナで様々なことがリモートで可能になってきていたため、リモートでの校長就任も可能ではないかと思うようになりました。チームに相談したところ、びっくりされましたが「クリスが受けてくれるなら最高だよね!」という意見が大半だったので、ダメもとでお願いしたところ、なんと受けていただけたという次第です。

編集部:堀井さんがHISに事務局長として参画された背景を教えてください。

堀井さん:所属していた神奈川県の学校法人で、研究開発チームの教職員と教育視察ツアーを企画して、2020年のHISのサマースクールを視察したのが最初のきっかけでした。すでに、創業者の草本さんとは2018年にお会いをしていました。

 当時、白馬で過ごしたことをきっかけに、白馬という土地に魅了され、個人的にも白馬でリモートワークをするようになり、よく白馬を訪れていました。また、ワールドピースゲームのファシリテーターの資格を持っていたので、白馬村の方々を対象にした説明会などに参画させていただいたり、HISのサマースクールにも導入されたいとのことで、お手伝いさせていただくことがありました。ただ、正直なところその時点では、実際に自分の学校で運営をしていましたし、白馬インターナショナルの設立に参画する予定は全くありませんでした。

 ただ、白馬には頻繁に通っていたので、草本さんにお手伝いができることがあれば是非とお伝えし、学校設置のアドバイスという形で徐々に参画させていただいていました。HIS立ち上げの約1年前くらいのことでしょうか。実際にいざスクールを立ち上げる段階にて、学校を立ち上げる際の入試の設定や説明会の実施、保護者とのコミュニケーションや、学校運営や地方自治体への申請などについて運営面について、専門家の方がまだいらっしゃらず、徐々に実務レベルのお手伝いをさせていただくようになりました。

 当時はまだHISに参画を決められた先生がお二人でしたので、バックオフィス側の学校運営を支える面や創業準備の立ち上げを、結果的に私の方で担当させていただきました。学校の認可申請相談やプロモーション、サポートを得るためのファンディングの活動の枠組みや学校設立のフレーム、また地方自治体との交渉などを担当しました。

編集部:すでに私立校の法人運営を長年ご経験されている堀井さんが、運営面を完全に支えて下さって、創業者の草本さん、HISの先生方はとても心強かったのではないでしょうか。

堀井さん:クリス先生が2022年の春頃に正式に校長として着任され、そこから9月の開校に向けてラストスパートで立ち上げていきました。創業者の草本さんは、白馬に新しい形のスクールを立ち上げたいとお一人で様々な課題に取り組んでいらして、これも一期一会と思い、HISの立ち上げに参画してきました。

編集部:ガイドとスクールで呼ばれていらっしゃる先生方ともお話をさせていただきましたが、本当に多彩で才能と情熱に溢れ、多くの経験を持たれた先生が多い印象があります。先生方はどのようにHISに参画されたのでしょうか?

草本さん:実は、今回HISを立ち上げる際に、大々的な採用の宣伝はあまりしておらず、知人に教えていただいた、インターナショナルスクールの先生方がよくご覧になるというサイトに告知を掲載させていただいたのですが、そちらを経由して200名もの先生方に世界中から応募をいただきました。

また、HISのウェブサイトを見つけて、直接応募してくださった先生方も多くいらっしゃいました。結果、想像以上に沢山の多彩な先生方に応募をいただくことができました。

編集部:これから新規に日本で立ち上がるインターナショナルスクールにそれだけ多くの優秀な先生方が応募されたのは素晴らしいですね。どのようなことがそれだけ多くの先生方を惹きつけられたと思われますか?

草本さん:私が思うところとしては、世界中のインターナショナルスクールの先生方も、今の学校教育について同じような疑問やもっとこれからの時代に合った教育に変えていきたいと思われているのではないかと思います。インターナショナルスクールと一口に言っても、伝統校も数多くあり、学校の決められた細かなルールやフレキシビリティの少ない時間割や生徒中心と唄いながらも実際はそうではないなど既存の枠組みの中で、疑問を持ちながらもなかなか変革の機会を見つけられずにいらした先生が多くいらっしゃったのではないかと思います。そう言った、課題意識を持って、もっと新しい教育の道を模索されたい、形作りたいという先生方から応募をいただきました。


3回目では、HISで実践されているプロジェクト型学習 (Project Based Learning、略してPBL)社会性と情動の学び (Social Emotional Learning 略してSEL)についてお伝えします。

コントリビューター

島田 敦子 | Atsuko Shimada

教育関連企業、自動車メーカー、IT企業でのマーケティング職を経て、米系機関に勤務。現在はIT業界に関連したリサーチや、ビジネスコンサルなどに携わる。2004年頃からダイバーシティプロジェクトに参画したことをきっかけに、ワーキングマザーの取材やイベント活動などをプライベートで実施。妊娠・出産を機に次世代教育や、AI時代の教育に興味を持ち、さらに日本モンテッソーリ教育総合研究所にて0-3歳の教師養成通信教育講座を修了し資格取得。二児の母。 慶應義塾大学総合政策学部卒。