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社会に開かれた小学校、ヒロック初等部から大人への招待状とは?

写真提供:ヒロック初等部

昨今気候温暖化問題など巨大な社会課題や日本社会の手詰まり感が漂う中、これからより良い社会をつくっていくために教育のあり方を見直す事が大切だと考えていらっしゃる方にお目にかかる事がとても多くなりました。本日はそんなモヤモヤしている大人達も子ども達の学びの場づくりに関われる、本気で社会に開かれた小学校、ヒロック初等部開校を準備中の蓑手スクールディレクターにお話を伺いました。

一条校に縛られないことで実現する真正な学び

日本では文部科学省の認可を受けている学校である一条校という学校(公立、私立含みます)以外にも、インターナショナルスクール、フリースクール、オルタナティブスクールと言われる、運営者が自由に学校運営の方針を設定し、カリキュラムを考え学校・学級経営を行う学校があります。ヒロック初等部は開校段階ではオルタナティブスクールとしてスタートするため、「福利 (Well-Being) の拡張」実現する学校というヒロック宣言のもと、一条校の制約に縛られない新たな学びのあり方をデザインされています。

例えば、ヒロック初等部では生徒と学びのナビゲーターであるシェルパの比率は12:1となっています。公立の3分の1程度の比率を実現することで、シェルパは子ども達一人一人の興味関心を丁寧にサポートする事が出来ます。

ヒロック初等部のカリキュラム詳細はこちら https://www.hillock-school.com/wp-content/uploads/2021/08/23374a89bc38f4b044bbb3ddcc1dc42f.pdf

写真提供:ヒロック初等部

子ども達が自らの成長や学びに主体的に関われる学校デザイン

ヒロック初等部のカリキュラムでは、国語、社会、算数、理科といった教科の学びにおいても子ども達に選択の権利が与えられ、子ども達が自律的に、その子一人ひとりの成長のスピードに応じた形で学ぶ「自由進度学習」やテーマを通じて教科の知識を広げ、深める「テーマ学習」に取り組みます。

そして、教科の枠組みに縛られず、子ども達一人ひとりが関心のあるテーマを設定する「マイプロジェクト」という探究学習の時間も週に3限設けられており、好きなことに没頭しながら学ぶ環境が確保されています。

ヒロック初等部では「Wild で Academic」な学びを標榜されていますが、ワイルドな学びはどう子ども達の主体的な学びにつながるのでしょうか?

蓑手スクールディレクター 「自然を大切にしたいという前提はありますが、ワイルドという言葉に込めた思いとしては、誰かが準備している事ではなく、成功は約束されていない事に挑戦して欲しいという考えがあります。失敗を誇りにできる。勇気を出して挑戦した子どもを称えていきたい。そんな逞しさを身につけて欲しいです。失敗を笑い飛ばせるくらいがいいですよね。そうする事で、本当にやりたい事や本質を大切にした生き方ができる様になります。」

子ども達は小さい時は失敗を恐れないと思いますが、何故失敗を恐れる様になるのでしょうか?

蓑手スクールディレクター 「今の教育システムは、どちらかというと大人の怖さを解消するためにできています。失敗は成功の元だと分かっていても、失敗はしない方が良いと思っている。子どもの失敗は自分の失敗だと思ってしまうから、子どもに失敗をさせたくなくなる。そういう大人の怖れを手放せないと、子ども達は失敗を恐れる様になります。」

マイプロジェクトに欠かせないパートナーは社会にいる大人達

何故日本の一条校では探究的な学びが実現しづらいのでしょうか?

蓑手スクールディレクター 「日本は世界でも珍しいくらい、総合学習という探究的な学びを実践する時間が年に90時間くらい設けられているのですが、使いこなせていない学校が多いのが現状です。ヒロック初等部では、子ども達の関心が花開くかを大切にしており、マイプロジェクトではカリキュラムをその子に合わせてつくっていきます。子ども達が探究的な学びを進めていくにあたり、聞きにいける、会いにいける人達が大勢いることはとても心強いことです。」

今回始められたクラウドファンディングは、ヒロック初等部の学びづくりに関わりたい大人達への招待状のようですね。大人の方へのメッセージがあれば教えてください。

蓑手スクールディレクター 「今までも公教育の先生方からは意見をもらったりディスカッションをしていますが、これからは世田谷や東京といった地域の方々とつながっていきたいと考えています。子ども達にとってはパッと会いにいける社会の大人とつながれることで、学びと実社会のつながりに気づく事が出来ます。一方で、大人の人達には、子ども達との学びの場がとても面白い場所だということを知って頂きたいです。今回のクラウドファンディングのプロジェクトでは、100名のバディ(仲間・先輩)を募集しており、学校創りの仲間として関わって頂きたいと考えています。」

昨今教育に関心のある社会人はとても増えてきていると思うので、今回のプロジェクトは普段学校と接点が持ち辛かった大人にとって嬉しい招待状ですね。我々はどの様にヒロック初等部の学びづくりに関わっていけるのでしょうか?

蓑手スクールディレクター 「大きく2つの関わり方があります。1つ目は「学びの研究所」の研究員として、ヒロックで起こっている学びを仲間と一緒に、文献も交えながらディスカッションをしていく場への参加です。今まで教育に接点のなかった方にも是非関わって頂きたいと思っています。そして2つ目は「ヒューマンライブラリ」という、子ども達の探究的な学びを下支えしてくださる仲間として登録頂く形になります。」

色んな大人との接点が生まれることが子どもの多様性につながる

蓑手スクールディレクター 「子ども達の思考が固定化される前に、本当の意味でも多様性を持てる子ども達になって欲しいと考えています。子ども達には元々多様性が備わっているので、大人は邪魔をしない事がとても大切です。」

ヒロック初等部の学びの特徴の1つは、東京がキャンパス(フットワーク軽く、社会とつながる)であることを活かし、子ども達が社会とつながりを持つことなので、ヒューマンライブラリに多様なお仕事をしている方が登録される事が、子ども達の学びの深さにつながりますね。

誰もが学校創りの仲間や応援団になれるクラウドファンディングの魅力

すでに200名近くの方が、600万近くの支援を行い目標の500万円を超えられているヒロック初等部のクラウドファンディングプロジェクト。個人としての応援的な関わりから、企業としての関わりなど様々な形で参加する事ができます。最後に蓑手スクールディレクターに、クラウドファンディングへの想いを伺いました。

蓑手スクールディレクター 「ヒロック初等部は一条校でないので補助金が出ないのですが、出来るだけ家庭への負担が大きくならない様にと考えています。なので、地域やいろんな人と繋がりながら学校がつくれて持続できる形になって欲しいのです。また今を憂う方が多いですが、教育による事が大きいです。未来は教育がつくっていきます。巡り巡って自分ごとになるのです。ヒロック初等部は大人も子どももストレッチゾーンで学べる場所として成長していきたいと思います。共感して下さる皆様の応援をお待ちしております。」

インタビューを終えて 〜 竹村の感想

蓑手スクールディレクターは以前公立小学校で教鞭を取られていました。その頃から、子ども達一人ひとりへのアプローチを大切にされていましたが、ヒロック初等部というゼロベースで設計された学びの場づくりに込められた想いは格別です。ヒロック初等部では子ども達一人一人のウェルビーイングだけでなく、大人達が本質的な学びの醍醐味を再確認し、子ども達の成長の喜びを共に分かち合うという、地域全体で子どもを育てていく流れにつながりそうで、とてもワクワクするお話でした。


ヒロック初等部公式サイトhttps://www.hillock-school.com/

ヒロック初等部のクラウドファンディングプロジェクトはこちら

https://readyfor.jp/projects/hillockshotobu?fbclid=IwAR3wlJIjS2UE_qNgxsLrzL88HgN-nZLYmR52TMV4KbxPP5xdLtBGFjZ3-dg

写真提供:ヒロック初等部

インタビュー & ライター:FutureEdu 代表理事 竹村 詠美