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ディズニー作品の“お姫様像”の変化に見る、これからの時代の女性像とは?

■ディズニープリンセスの性格が変わりつつある

女の子ならみんな一度は読んだことがある“お姫様物語”。ディズニーは、プリンセス展開の代名詞ともなっている、若い女性(主にプリンセス)を主人公とした映画作品を数多く輩出しています。そんなディズニープリンセスですが、年々主人公の“女性像”が変化してきていることに、皆さんお気づきでしょうか?

クラシカルなストーリーの「白雪姫」や「シンデレラ」は、気立てが良く、優しくて、(しかも)美しい女性が、不遇な環境や絶体絶命の危機から王子様に奇跡的に救われ、末長く幸せに暮らすというお話。「眠りの森の美女」も、100年の眠りについたオーロラ姫を王子様が救います。

「リトルマーメイド」は、自立心が強く、勇敢で優しくもおてんばなお姫様、アリエルが、遭難した王子様を助けたことをきっかけに惹かれ合うというラブストーリー。魔女と不利な取引をして、父の生死が危ぶまれるトラブルに陥りますが、最後は王子様が魔女を仕留めて幸せになります。

どの映画も、最終的には王子様が危機に陥った女性を救ったことで恋愛に発展し、女性は幸せを見つけるという展開が似ているかと思います。しかし、こういったクラシック作品の話の流れは、欧米では、「これからの時代を生きる女の子たちが、自立心を養うことに繋がらない」として、長年批判の声もありました。

その時代の流れを受けてと思われますが、近年のプリンセスは、優しさに加えて、知性、勇敢さや自立した行動力を伴った女性像へと変化してきているようです。

■王子様を待つプリンセスから、自立型のプリンセスへ

人気はともかく、98年に誕生した「ムーラン」は、今までのプリンセスのイメージを一新する、家族を守り、尊敬を集めるリーダー。一斉を風靡した「アナと雪の女王」も、100%男性が女性を救うわけではなく、お姉さん(エルサ)の協力を得て主人公のアナがピンチを乗り越えるなど、姉妹愛も重なり合いながらハッピーエンドに向かいます。最近実写化された「美女と野獣」では、主人公のベルを演じるエマ・ワトソン自身、女性の地位向上に力を注ぐ才女です。映画においても、見かけで人を判断しない優しい気持ちに加え、自分の意思を貫く強さや勇敢さ、知性がスクリーン越しに伝わってきます。

昨年度上映された「モアナと伝説の海」では、主人公のモアナとタッグを組む男性マウイは、恋愛相手というより相棒の側面が強く、最後にはモアナはリーダーとして一人島に帰還します。

このように世界中の女の子に多大なる影響力を持つディズニーが、女の子たちのロールモデルである映画のヒロインは、もはや運命で王子様が来るのを待つ存在ではなく、優しさや共感力のあるリーダーに変化してきたと映画を通して訴えていることは、とても喜ばしい流れです。

■伸びが期待されつつも人材不足に悩むテクノロジー業界。特に低すぎる女性の参加率

一方、現在の教育現場、家庭や社会では、このような新しい女性像について話されているのでしょうか? また、身近にモアナやアナのような、自立した女性リーダーのロールモデルは存在するのでしょうか? まだまだ少ないというのが実際のところだと思います。

現在ある課題に目を向けるために、AIの時代にも継続的な成長が期待されるテクノロジー業界を例にとって考えていきましょう。世界最大級の会計事務所「PwC」がイギリスで行った調査によると、キャリア教育でテクノロジーを勧められた男子生徒は33%いるのに対し、女子生徒はわずか16%しか勧められなかったそうです。またテクノロジー分野でのキャリアを検討すると答えた女子学生は、全体の27%しかいなかったという結果も出ています。

これからの時代は科学技術やインターネットが生活の隅々にまで行き渡り、テクノロジー無しで生きていくことは難しくなってきます。そうした時代背景もあり、伸びが期待されているサイエンスやテクノロジーの分野ですが、人材不足は深刻です。特に、「理系」という大きな壁に阻まれ、女性の参加率は非常に低くなっています。一体何が女性のテクノロジー業界進出の妨げになっているのでしょうか?

■女性のテクノロジー業界進出を妨げる“偏見”の壁

ITの協会である「ISACA」が行なった調査によると、テクノロジー業界に女性が少ない最も大きな原因は、次の3つだという結果が出ました。1)女性のメンターが少ない、2)女性のロールモデルが少ない、3)性別による偏見(偏見を感じていないと答えている人はわずか8%のみ!) また少し古いですが、2005年のベネッセ教育総合研究所の「進路選択」に関する調査では、調査対象となった女子生徒の半分以上が、中学卒業までに文系理系を選択し、高1までになんと8割以上の女子生徒が文理の進路を決めてしまっているために、中学生まで影響が、大学の進路の選択で大きいことがうかがわれます。日本では、コンピューターサイエンスも含むテクノロジーに関わる専攻は、理系となることが多いため、小さな頃の選択が将来に大きく影響がある事実は否めません。

本来、性別による能力の差はないはずです。しかしどうして女子は理系の道を諦める傾向にあるのでしょうか? 私は、そこには“無意識の中での偏見”があるからではないかと感じています。

たとえば、多くの女子生徒が持つ理科や算数への苦手意識。実はそうした意識を植え付けているのは、身近な親や教師だったりします。「女の子だからそんなに頑張らなくてもいい(お嫁に行ければいい)」「女の子だから算数や理科は苦手で当たり前」と考えているので、算数のテストの結果が悪くてもある程度許してしまったり、また理系科目においては、女子生徒より男子生徒に良い成績を与えがちな担任もいたりする、という研究結果も出ているほどです。

親や教師など周りの大人が、「女子だから」という理由だけで女の子に理系科目を頑張るように仕向けないのは、“無意識の中での偏見”の積み重ねなのではないでしょうか? 算数のような積み上げ教科は、早いうちに苦手意識を解消してあげないと引きずりやすいだけに、女の子=算数や理科が苦手だから文系、男の子=算数や理科が得意だから理系、という紋切り型な偏見により、子供達の可能性を潰さないよう気をつけたいものです。

もう1つ、周りにロールモデルが少ないことも、女子が理系を選びにくいと感じる理由でしょう。社会性が強い女子だけに、ロールモデルの不在が理系のフィールドに魅力を感じない生徒を多く生み出している=負の循環を引き起こしているように見受けます。自分ごとに近づけるためには、理系女性のロールモデルを知る機会も増やしたいものです。

■理系も文系も能動的に選べる社会になるよう、大人たちがすべきこととは?

東京オリンピックを3年後に控えた今、そろそろ“社会の見えざる偏見”から生まれる負の連鎖を断ち切る時ではないでしょうか? 政府も将来の人材不足に備え、女性の社会進出や副業が認められる社会など、働き方革命を推進し始めています。

おとぎ話だけではなく、現実世界においても大人が無意識な偏見を捨て子供の苦手意識を生まないようにすることで、多くの女の子たちが自信を持って、理系も文系も能動的に選べる社会になってほしいですね。

ロールモデル不在は一気に解決できない問題ですが、まずは身近な母親がロールモデルになることはできます。幼い時から自然やテクノロジー、サイエンスへ関心を持つような遊びを親子で楽しんだり、時間がかかっても自ら課題を解決するよう促したり、また失敗を恐れずにチャレンジする行動を奨励していったり。そしてトドメの「女の子だから、XXXしなさい。△△△はダメよ。」と言い過ぎないことで、徐々に21世紀型スキルを持つ女子が増え、リーダーシップを持ち自立した女性の層が広がってくるはずです。

新時代の女性のロールモデルに近づく習慣を、少しずつつけていく。次の映画公開を待たずして、身近なところから親子で取り組めることを考え行動していきませんか?映画の世界の進化から見られるように、お洋服はプリンセスでも、自立し専門分野のある女性が生き生きと活躍する世界が、おとぎの国の話だけで終わらないようにするのが、劇的に時代が変化する今の世界の大人の役目だと思います。

参考資料:

Worst to First: Every Disney Princesses Ranked: http://screencrush.com/disney-princesses-ranked-best-to-worst/

Startup Daily: http://www.startupdaily.net/2017/03/lack-female-mentors-role-models-among-key-barriers-facing-women-tech/